大晦日の日、僕は慌てていた。
年の終わりに何をしようか全く考えていなかった。
彼女がつまらなそうにしている顔が頭の中で想像がつく。
お昼頃に約束をして、そこから何をしようか、全く思いつかない。
結局忙しない人々と共に町の流れに任せる事にしてブラブラと歩いていた。
午後11時頃、地元の神社に初詣の為向かう。元旦を待つ人々の列に並び僕達は小刻みに体を震わせていた。
付き合い出してから1ヶ月と少し、まだ手も握らずに僕達はいた。それでも僕は満足していた。
除夜の鐘が鳴ると同時に人々の列は小さく動き出した。
そんな中、僕達は小さな声で「明けましておめでとう」と言い合った。
お参りを済ませ僕は彼女に聞いてみた。
「何をお願いしたの?」
彼女の声は小さく小さく「秘密」とだけ言い返した。
「これからどうするの?」
僕はハッと思い出すように「初日の出を見に行こう」と答えた。
向かった先は「高尾山」だった。
僕は山頂から見る朝日が好きで、過去にも初日の出を見に高尾山に登った事があった。
登山口に着き、僕は思わず言ってしまった。
「下から歩いていこう」
そのまま2人で歩き出し、坂道を進み僕は心の中でつぶやいていた「失敗した」
思っていた以上に疲れる。昼から歩きっぱなしだったのを浮かれ気分で忘れていた。
山頂までたどり着く途中に神社があった。僕は迷わず「おみくじ」を引いた。
「小吉」・・・・・・・・・・僕は心の中で叫んだ「今の俺もこれからの俺も彼女と居られれば大吉だよ」
そう僕達には将来が不安になる要素が全く無かった。
そんな事を考えているうちに山頂に着いた。
日が昇るまでまだまだ時間がありそうだ。僕達はなるべくよく見えるポジションを確保出来るように人の多く集まっている場所に入っていった。
あと1時間半、どうやって時間を潰そうかな?なんて考えながら僕達は仕事の話しや学校の話しを色々し合っていた。
話しと話しの間、30秒くらいの沈黙が訪れる、僕は何を話せばいいのか頭の中でグルグルしている。
何回かの沈黙の後、僕は前にいる彼女に後ろから優しく抱きしめていた。
その後はずっと沈黙のままだった。「日がこのまま登らなければ、ずっと抱き寄せていられるのに」心の中で時間が止まるのを願った。
初めて彼女と寄り添い合えた瞬間だった。
朝日が昇り、2人で子供のように大はしゃぎをした。お互いの冷えきった手と手を取って初日の出に感動していた。
帰りの下り道は手を繋いで歩いていた。
僕は最高の年越しを迎えていた。
18歳の冬だった。