~~基本の「き」~~

1.「聞く耳」指導
国語は全教科の基本である。
毎日最低1時間授業があるし、低学年では教科全体の約30%、
6年間では約6000時間の授業の25%近くを実施しているのが国語である。
だからこそ「聞く」を基本にした授業実践をしていただきたい。
 

それは国語を学んで初めて他教科の学習が出来るからだ。
そう言い切って良いぐらい、
国語は「聞く」「書く」「話す」「考える」「伝える」を指導している。
 

いわば要の教科なので、
日々の授業はこの教科中心に進めていって良いと思う。
ではなぜ「聞く」が大事なのかというと、
それは聞くから理解できる。
聞くから考え、述べることが出来るのだ。
これは親の話、教師の話、地域の方の話、そして友達の話。
全ての基本である。
これがOKであれば「書く」「話す」「考える」は難しくない。

但しここが基本中の基本であるにも関わらず、
出来ていないクラスが存在する。
担任と児童に一体感が無い授業、担任主導の授業が多く、
結果的にお喋り、
私語の蔓延、授業自体聴かない児童を育ててしまう。
だからこそ日頃から「聞く」授業が出来るように、
教師の授業改善と児童の態度を確認していきたい。

・児童に寄り添った一体感のある授業をしているか
・児童と活発なやりとりをした授業実践をしているか
・児童が下を向いているのに、お喋りしているのに進めていないか
・脱線した質問につきあっていないか



・遊んでいる児童、駄目な事をしている児童に対して
 指導をしているか、叱責しているか
・小さい声で発言する児童に繰り返して声掛けしているか
 

教室内に届かない声を許すという事は、
「意見は聞かなくてもよい」と言っているのと同じだ。



2.2つの「読む」が基本
国語は教科書を読むところから始まる。
だから「音読」「黙読」を上手に使い分けていきたい。
音読には朗読、範読、指名読み、一斉読み等がある。
内容把握するには音読では心許ないが、読む力は確実にアップする。
ある意味スキルに近い。
但し聞き手意識を持った教師の範読は別である。

黙読は把握読み、確認読み、要約読み、ポイント読み等がある。
読み取りの力を高め、内容把握するための唯一の手立てである。
購入した本を音読する人が皆無であるように、
「本」の内容を理解するには「黙読」しかない。

国語授業の基本は「読む」(読み)である。
だから「読む」から始めて「読む」で終わりで良いと思う。
但しここで言う「読む」には「音読」と「黙読」が含まれている。
授業では最初に音読から始める場合、黙読から始める場合がある。
 

学年によって、また単元によって異なるが、
下学年は音読でスタートしたり、音読を多く用いたりするのがお勧めだ。
それはまずは教科書をスラスラ読めなければ始まらないからだ。
勿論授業時間だけではそれを達成するのは難しいので、
それを補う意味で地道な音読指導/音読カード/読書指導等が必要である。
それに慣れていない文や言葉に接する機会が多いので、
まずは「目」以上に「音」で覚えていくことが大事である。
下学年を受け持ったら、努めて声に出して読む回数を多くすると良いだろう。


これに対して「黙読」をする機会もまた実は非常に多い。
国語指導の場合は「抑揚を付けて読む」「音読発表会」等々、
ややもすると音読ばかりが目に付くが、
内容を理解させるためには黙読が基本である。
これは「物語文」「説明文」は勿論、「詩、俳句」等、
全てで有効な手立てである。
 

音読の声出しは「目」の他に「耳」「声」「口」という、
幾つもの動作を同時に行う必要がある。
だが黙読の際に必要なのは基本的に「目」で読むだけなので、
その分、文章の主旨は何であるか、ここに集中できるのだ。
だからそれぞれの効用や目的に応じて、
「音読」「黙読」を使いこなしていきたい。



3.授業の実際
授業では導入で一斉読み/指名読み/音読をよく実施している。
しかし2で書いた通り、これだけでは書かれた内容の理解は難しいので、
音読と共に黙読を併用する必要がある。
 

具体的には次のようになる。
4年「広告と説明書を読み比べよう」
T「2ページを大きな声でゆっくり読みます。終わった人から座ります」(音)
(全員通読でも良い)
T「大事なことが書いてあるのは右側と左側、どちらですか」
S「右側です」
T「2つの事が書いてありました。何と何か分かりますか」
S「広告と説明書です」
T「ではその違いに気をつけながら、声に出さずに読んでみます。
読み終わったら、教科書を置きます」(黙)
T「広告のことを書いているところに波線を入れます」(黙)
T「線を入れたところをみんなで読みましょう」(音)
T「広告は何のために書いていましたか」S「(答える)」
T「またどう伝えていますか」 S「(答える)」
T「具体的な工夫が幾つか書かれていました。教科書に丸をつけます」(黙)
(音)(黙)

音読には全体読みと個人読み、どちらもある。
いわば全体把握であり、イントロのようでもある。
音読する機会が開始時に多いのはそのためだ。
 

これに対して黙読は読み取りである。
それもただ読ませるのではなく、
目的を絞ってから読ませるのだ。
つまり何が書いてあるのかを注意して読むことが大事なので、
そこを強調したい。
「聞かれたこと」を探るため、
理解してもらうために黙読をするのだ。
音読と黙読の役割があるので、
それぞれの意味を踏まえながら授業実践したい。

 

 

日々の学習エッセンス
・日頃から徹底して「聞く」指導を
他教科・道徳・総合・特活なども活用
教師の声だけに偏っていないか、児童の声、友達の声も確認
児童が下を向いているのに、話していないか
脱線した質問につきあっていないか
遊んでいる児童、駄目な事をしている児童に対して
指導をしているか、正しているか

・日頃の学習の基本は「話す」
何でも声に出す 意見を引き出す
発問したら、聞いたら、必ず考えを引き出す
今の児童は家庭で「話す」習慣がない
だからこそ話す機会を多くすること
それで「聞く」習慣も増していく