①音読発表会の意義とは
新学期がスタートした4月、
教科の国語は巻頭詩に続いて、音読教材が始まる。
 

授業参観も大体この月末に実施されるので、
低中学年中心に「音読発表会」をするクラスが多い。
 

その発表形態を見ると、
大体5.6名が前に出てきて、一場面を声に出して読み合う。
そして次のグループがまた登場する...。
1グループあたり僅か数分だと思うが、
保護者は自分の子の様子が掴めるので、ほっと一安心である。
いわば毎年4月の風物詩と言えるかも知れない。
 

但し、この場面を観ていつも思うのは、
・どのグループも大体同じ場面/段落を読む。
・男子も女子もほぼ同じ声量で読んでいる。
・個人差は殆ど感じられないし、どれも大体同一である。


一言で言えば、
クラス全体で歩調を合わせているようで、個々の特徴が無いのだ。
だから保護者は自分の息子/娘の番が終われば去るか、
他学年の参観に向かい、最後まで参観することはないと思う。
つまり発表会だけであって、
学習の向上が伴っていないから、参観する価値が見出せないのである。

一人一人に出番があり、
均等な時間が確保されているのはOKだろうが、
音読で終わり、朗読まで高めていないのが惜しまれる。



・音読...声に出して読むこと。
・朗読...文章の思想や感情をくみ取り、
発音正しく趣のあるように読みあげること。
 

 

物語を読めば一人一人の「読み」は異なるし、感想も異なる。
主人公に思いを寄せたり、情景や場面に感動したり...、
個々が異なって当然なのだ。

 

だから教師自身が「音読発表会」を均等な発声練習と捉えず、
一人一人の個性が生きる朗読域まで高めていきたい。
ではどんな取り組みをすれば「感情をくみ取る」事が出来るのか、
「趣ある読み方」が出来るのか、
順を追って紹介していきたい。


②基本的な音読練習
・丸読み(全員は×、ペアが適)
・一人読み
・ペア読み、グループ読み
・間違い読み1(読み間違いで交代)
・間違い読み2(教師が敢えて間違う→指摘)
・追いかけ読み...
いろいろあるが、効率的(時間対効果を考慮)に行いたい。

下学年に効果的なのが「追いかけ読み」(範読)
教師側が初級、中級、上級編というパターン分けして読むと良い。
1.初級編...ゆっくり、正確に読む
2.中級編...普通の速さですらすらと読む
3.上級編...抑揚を付けて読む(心情/情景)
4.応用編...児童自身で工夫して読む

 

③音読の法則
音読練習には、
個人練習>ペア練習>グループ練習>全体練習...
といった方法がある。
 

個人レベルで練習するほど躓かずに、すらすら読めるようになる。
但し朗読に高めていくには練習量だけでは無理があり、
「量」から「質」に転換しなければならない。
範読(CDなど、教科書添付)>NHKアナの指導集>
FM等の朗読の時間>教師の範読>優秀児童ピックアップ...
となってくるので、
まずは手本をコピーして発する練習を繰り返すのである。
 

上手になる手立てはただ一つ、
まずは旨い朗読を真似することから始める。
これに尽きると思う。

 

④音読から朗読へ
・主人公中心に心情を読み取る 表現力アップ
・情景中心に描写の意図を読み取る “歌唱指導”
・本人になりきって会話文を読む
この3つをまとめると集大成の朗読になる。
 

工夫するところは...
・大きい、小さい声(強調)
・速い、遅い声
・高い、低い声 楽譜記号と
・伸ばす、縮める声 似た感覚
・硬い、柔らかい声
・ゆらゆら声
・若い、年老いた声(声量/速さ/細さ/太さ)
・文の間、字間(一文字ずつ)に留意
・音楽の歌唱や合奏と同じ感覚で指導すると良い。
 

音楽の時間、合唱指導は日常茶飯事である。
そのまま気持ちよく歌うのも良いし、
歌詞に合わせて工夫するのも楽しいだろう。
クレシェンド/ブレス/タイ/スラー/スタッカート...
音の強弱や速度記号等、様々な表現方法がある。
それと似た指導をすると児童も分かりやすい。


⑤見える化を図る
上記の4を具現化したのがここである。
視覚的に分かりやすくする試みで「見える化」を図るのだ。
楽譜には音符と共にクレシェンドやスタッカートが書いてある。
だから歌いながら「ここから大きめに...」
「このあたりは弾みをつけて...」等を気をつけながら歌える。
 

音読も全く同様で、教科書にろいろな記号を入れておくと、
音読時、朗読時、発表会などに有効である。
気づいたときにその都度入れていきたい。
またオリジナルの記号類を用いるのも手である。
ex.二重線→強調、波線→ゆっくり、赤丸→大きな声
~上学年は自分で分かれば良い~

その他に...
・波線、直線、二重線、太線
・丸(大小)、囲み、区切り線
・色変更、マーカー、
・文字、記号など

 

⑥パワーアップの法則
真似るだけでは物足りない!
きっとそういう声があると思うので、実践編を紹介したいと思う。
(2年児童への指導例)

2年国語
「風のゆうびんやさん」より...
「あげはちょうさん、ゆうびんです」
花びらみたいな、いいにおいの手紙がとどきました。
「あら、うれしい。パーティーのしょうたいじょうですって。
こうえんで、ばらの花がさいたんですって。ぜひ行かなくちゃ」
おしゃれなあげはちょうは、いそいそとしたくをはじめます。

音楽記号を挿入してもOK!

ワンポイント1
下学年ほど読み取りが難しいので、教材から一端離れて、
現実社会に落として考えると分かりやすい。
Q.お誕生会に行ったことありますか。
Q.お誕生会って、楽しい? 悲しい?
Q.パーティーに行きたい?
Q.招待状が届いたら、どんなふうに嬉しい?
Q.身体で表現してみて!
Q.今度は声でも表現してみて!などなど
思ったこと、感じたことを声で表現するための手立てである。

ワンポイント2
主人公をイメージ化して表現する。
Q.あげはちょう、見たことありますか。
Q.色は? Q.きれい? Q.やさしそう? Q.飛び方は? Q.重い、軽い?
連続的に質問してイメージを掴ませる。
Q.じゃあ、今から2つ言うので、どちらが軽いか考えてね。...
Q.(同様にやさしい声とこわい声を比較/表現する)

ワンポイント3
「書いてある通りに読まなくても良い」という発想。
「アー」→「ガアアーッt」という表現もありだろう。
いわば「伸びたり縮んだり大作戦!」
ex...「いそいそと」↓
「い そ い そ と」
「いーそいそと」 「いそいそと」

 

⑦独自性の追求
最後に紹介するのは一人一人のオリジナル性。
音読や朗読時はまず足を揃えて起立する。
教科書は常に45度程度で持って顔を上げて声を発する。
勿論その場で立つので、動くことはないし、
教科書を外すこともない。
 

そんなルール、一体誰が決めたのだろうか。
 

足を開いても良いし、片手持ちでも良い。
教科書を持たなくても構わない。
声を上げる度に腕や頭を動かしたり、
身体全体を駆使して、表現するのも面白い。
歩いたり、しゃがんだり、
その場を離れて動き回っても良いだろう。
本人も楽しいし、観ている側も楽しい!


カラオケに行くと、
100人が100通り、それぞれ自由に歌っている。
旨い人もそうでない人も?
実に嬉しそうに楽しそうにマイクを握っている。
勿論旨い人はそれなりに聴けるし、
音痴な人だって趣があって、結構いいものだと思っている。
人それぞれに味わいがある。きっとそれで良いのだろう。

クラスでは、
グループ単位を廃して個々で進めても良い。
30数名であれば、一人1分の持ち時間が確保される。
「自由にするので、自分のパフォーマンスを魅せて下さい!」
担任がそう語れば、児童はやる気満々張り切るに違いない。

たかが音読会、されど音読会である。