2019年、ラグビーワールドカップ日本代表の活躍に日本中が酔いしれた。
トーナメント進出の立役者、
ジェイミー・ジョセフHCが脚光を浴びたが、
攻撃面を担当したブラウンコーチ、守備面のハンセンコーチ、
両名の戦略が大きな功を奏していたのは殆ど知られていない。

またリーチマイケル主将を筆頭に、
各ポジション毎のリーダーも、
非常に大きな役割を担っていたのだが、
これらもあまり知られていない。

話を戻そう。
予選プールでティア1(格上)相手に
なぜ全勝出来たのか。
それはHCを筆頭にコーチやリーダーが
結集したからに他ならない。

クラス作りも同様で、リーダー育成が欠かせない。
それは担任だけでクラスを育てるのではなく、
児童と共に育てていくことで、より良い成長が見込めるからだ。


では核となるリーダーの育成、養成を考えていきたい。



①スタート時こそ命
4月に学級がスタートし、
早ければ20日過ぎ頃、遅くてもGW前後に席替えをするだろう。
ある程度児童の考えを尊重して席替えをしても良いと思うが、
1回目だけは担任の考えで行うと良い。
それは基盤となるグループに一人ずつ、
リーダーを配置する必要があるからだ。
普通はグループで掃除、給食、そして日常的学習を行う。
そこが安定すれば、クラス自体の安定に繋がっていく。

つまりグループの核となるリーダーの配置と育成を通して、
学級作りを本格化させるのだ。

始業した約3週間ほどで個々の児童の性格や行動、
学習面での力などが見えてくる。
その中から安定している児童、
判断力、積極性、統率力、力量…、
イニシアティブとれる児童をを洗っていく。
そしてグループの数(6~8名)だけリーダー候補を決定して、
各グループに配置するのだ。
また席替え前日にその児童のみ集めて話をする機会を設ける。
・集まったみんながこのクラスのリーダーである
・みんなにはその力量がある
・良いクラスを作るために力を貸して欲しい


この3点を伝えることで、
彼らはそれを意気に感じると共に自覚が生まれてくる。
これらを踏まえて翌日に席替えを実施すると、
席が確定した段階で各グループのリーダーが誕生しているのだ。
つまり先にリーダーを決定&配置、
その後に数十名のクラス児童席が決まることになる。

グループでは話し合い、
掃除当番、給食当番など様々な活動があるが、
特に授業での話し合いではリーダーに進行を任せる。
イニシアティブある言動がクラスを活性化させ、
まとまりある集団形成がされていくのだ。

だから年度初めこそリーダーの活躍は欠かせない。


②自らリーダー育成
4~5月頃までは担任が選んだリーダー、
それ以降はグループ毎にリーダーを決めることになる。
グループの人数が4名であれば、そこで推薦された児童がリーダーになる。
条件は「グループで一番信頼出来る人を選びなさい」。
この声に対してスタート時のリーダーが再選任されたり、
新しいリーダーが誕生したりするときがある。

ただ幾つもグループがあれば、適任でない児童が選ばれることもある。
またジャンケン紛いのいい加減な選任もあるかも知れない。
そういったグループは数日~1週間で“崩壊”する。
「先生!○○君が威張ってばっかりで、全然仕事しない」
「先生、怒って下さい」
この声に対して何て答えるだろうか。
「グループみんなで選んだのでしょう」
「そうだけど…」
「だったら○○君だけが悪いのかな」
「…」
「リーダーを育てていくことも大切だよ。うまくいかないときは、
一人で言っては駄目。全員一緒になってリーダーに言いなさい。
それでも難しいときだけまた来なさい」
リーダーを選ぶ難しさと共にその責任も自覚させることで、
クラスの意識が改善してくるはずである。



③係・当番の活躍
クラスでは様々な係や当番が活躍している。
その中で、グループリーダーと共に欠かせないのが核となる係である。
・「体育係」…児童を並ばせて準備運動を行う
(体育館移動などの整列係を兼ねる)
・「音楽係」…朝の会での歌(選曲&指導)を仕切る
・「学習係」…朝自習(特に担任不在の時間)を仕切る
特にこの3つの係は非常に重要である。
これらに共通していることは、児童の先頭に立つ役割であるという事だ。
「すぐに並んで下さい」「○○君、急いで並んで!」
「立って下さい」「歌の本を出して下さい」
「今日は声が少なめでした。明日はもっと大きな声で歌って下さい」
「プリントを配るので、すぐに座って下さい」
「もらった人から始めて下さい」等々、
明確な指示を出す必要がある。
その声で動くので、これらの係は中核となる児童が欠かせない。

係を決める段階まで遡るが、
「この係はみんなに指示するので、それが出来る人が入って下さい」
という声がけをしている。
特に体育係は人気の係なので、定員の数倍の児童が希望するときがある。
勿論その場合はジャンケンなどで決めない。
「希望する人は大きな声で指示を出してみなさい」
この声に対して躊躇する児童はその時点でアウトだ。
音楽係や学習係はさほど大きな声は必要ないだろうが、
的確な指示が出せる児童を選んでいる。
先頭に立つ機会がある児童とは、
イニシアティブを発揮する児童である。



その考えから、
ここでもリーダー育成していくことになる。

これらの係やリーダーは学級作りの要として欠かせないのだ。
・リーダーはグループや係だけではない。
「算数リーダー」「音読リーダー」「漢字リーダー」
「スポーツリーダー」「音楽リーダー」の教科関係、
「縄跳びリーダー」「ダンスリーダー」「遊びリーダー」等
季節限定版や教科以外のリーダーもある。
・クラスを見渡すと、何かで抜きんでた児童が必ずいる。
それらを探して、ポイントリーダーに任命していくことで、
児童の活躍の場が広がる。
そういう秀でた児童を是非見つけてほしいと思う。③権限の担保
各ポジションで活躍するリーダーを紹介してきたが、
このリーダー制度を担保するのが担任の大切な役目である。

リーダーを育てるというのは「仕事を任せる」だけではない。
「責任を担保する」「権限を与える」必要があるのだ。

体育係(整列係)を例に具体例を挙げる。
「早く並んで下さい!」
「後ろの方、ちゃんと並んで下さい!」
「先生!みんな言うことを聞いてくれません!」
係が懸命に叫んでも児童はすぐに並ぼうとしない。
こういう時に大事なのが担任の「発する言葉」、
「その方向性」である。

T「みんな、早く並びなさい!」「体育係が言っているでしょ!」
これでは係児童と何ら変わらないし、逆に担任の資質が問われる。

T「全員座りなさい。体育係が言ったのが聞こえた人、手を挙げます」
T「係の人が声をかけていました。間違ったことを言っていましたか」
S「言っていません!」
T「先生が言おうが係の人が言おうが、正しいことを行動するのが大事です」
S「……」
T「道路で危ない遊びをしていたとき、普通は注意されれば直すのに、
小さな子から言われたら直さないのですか」
「誰から言われても、それが正しいのであれば行動するのが基本です」
S「……」
T「それに係の声を聞かないのは、先生の声を無視していることと同じです」
T「係の人、大変だったね。これからは大丈夫だと思うよ。
但し、それでも言うことを聞かない人がいたら、先生に言いなさい。
先生がとっちめてあげるから(笑)!」
T「じゃあ、整列係の人、もう一度言ってあげて下さい」

リーダーや係はクラスのために働いてくれるのだから、
その言動に対して責任を持たせると共に、
担任がしっかり担保していかなければならない。
「リーダーを任せる」=「責任と権限を担保する」
「後ろには先生が控えているから大丈夫!
リーダーは存分にやりなさい」
状態を作ってあげることである。

また上学年であれば自己判断が出来つつあるので、
誰の声でも正しいことであるなら、
それを聞く姿勢と態度も養っていかなければならない。


リーダーの育成方法
・明確に仕事を依頼する
「グループ学習の時は、どんどんメンバーをあてて、
意見を聞いてね。聞いていない人がいたら、バンバン注意していいよ」
「掃除の時間はリーダーが命令したり指示したりいいよ。文句言ったら、
先生がやっつけてあげるから心配しないでね(笑)」
 

・褒める、感謝する
頑張ったリーダーは朝の会などみんなの前で褒める。
常に感謝する声を掛ける。
「いつもありがとう。あなたのお陰で〇班はすごいね!」
継続しなければ決して成功しない。


強豪チームの監督と弱小チーム監督の差は簡単。
「継続こそ命」