こんにちは、星ワタルです。


小学校や中学校のとき、国語でよくこんな問題が出た。


「この時の太郎の気持ちを50字以内で答えなさい」


文章中の登場人物の気持ちを考えて答えさせる問題だ。だが、私はこの手の問題が大の苦手だった。


私はほとんどの場合、回答欄に何も書かずにバツをつけられていた。たまに何か書いてみるはいいものの、大抵いつもバツか、いい時で三角をもらえるくらいで、マルを貰った記憶は全くない。おそらく一度もないに違いない。


さらに言えば、分からないものは書きようがない!と開き直っていたくらいだ。


どの話だったかは忘れたが、映画「男はつらいよ」の中で、渥美清演じる寅さんと前田吟演じる博のやりとりで、「僕の気持ちもわかって下さい」という博に対して、寅さんがこういい放つ場面がある。


「妙なこというね、お前は。俺とお前は別の人間なんだぞ。俺がお前の気持ちになってたまるかい!」


義理人情に厚い寅さんだが、こういう時に妙に理屈っぽくなる。だが、私が「この時の太郎の気持ちを50字以内で答えなさい」と聞かれた時の私の気持ちは、この寅さんが代弁してくれている。


つまり、俺は太郎じゃないのに、太郎の気持ちなんてわかるわけないじゃないか!というわけである。


いつだったか、あまりに国語の点数が悪かったことを嘆いた親は、私になぜ答えを何もかかないのか?と聞いた時があった。


その時、私が先のように答えたところ、さすがに親は呆れたのか、とりあえず何か書けといい、それ以上うるさく言われることはなくなってしまった。まあ、何か書いて1点でも点数が貰えればいいくらい諦めていたに違いない。


だが、自分では不思議なことに、幼い時の自分は、実は大変に涙もろい子供だった。何せ色々な物語を見ては情が移って泣いたり、友人が可愛そうなめにあっていると話を聞いて、自分も泣き出したりという子供だった。


その頃は、何も感じなかったが、国語の問題に答えられない自分は、では他人の気持ちがわからない冷たい人間だったのだろうか?


ある先生はこう言った。

「何でわからないんだ。太郎になった気持ちで考えればわかるだろう!」


んなことを言われても。私が太郎の気持ちになって考えた答えが違うのだから仕方がないではないか!と小学生にしては、やたら太々しい気持ちでいた私であった。


実のところ、今あらためて振り返ってみると、私が国語の問題が苦手だったのは、何か別の理由だった気がする。


というのも、私は「その時太郎が感じたと私が思うこと」をただ書くならば、たしかに書くことはできたこともあったからだ。だが、こういう時は、大抵字数制限に当てはまらないか、模範解答とは別のことを書いていたりしていた。


だが、ある時、私はきっと誰かに教えられたのだろう、問題を解くテクニックとして「答えは文中にある。だから文中から答えを探せばいい」みたいなことを教わった。


今にして思えば、簡単なことなのだ。文中に書かれている太郎の会話や仕草の描き方から、彼の気持ちを考えて書けば良いのだ。


だが、私はどうも納得がいかなかった。


大体、本当に太郎はそう考えたのだろうか?とか自分ならそう思うだろうか?ということを考えてしまい、ついに答えを書けないままということが多かった。


つまり、私がこの手の問題が苦手だったのは、大抵の場合、太郎でなく、そういう時に「自分ならどう感じるか」を一生懸命に答えようとしていたからに他ならない。


結局、国語の授業などは義務教育を卒業すると、再び出会う機会などなく、それ以来、私も太郎の気持ちにあれこれ悩む経験はなくなった。


だが、長い歳月を経て再びこの問題に直面するときが来た。


劇団に入り、脚本を手渡された私。

「この時の仁と優の気持ちを答えなさい」


「大切なことは脚本に書かれている!」と以前どこかで聞いた言葉を再び聞くことになる。


これは、果たして超えられなかった壁が再び目の前に現れたということか?超えられるまで何度も?


自分ならこう思うからこう演じるというのは、演技ではないのかもしれない。演技とは、所詮演技なのだ。自分は太郎を演じるわけであって、自分がどう思うかを表現するわけではない。演じるものはあくまで太郎という物語の登場人物である。


ようやく今になって「太郎になった気持ちで考える」と言った先生の言葉の真の意味がわかるようになってきた気がする。


独り善がりな演技にならないよう、太郎の気持ちをしっかり演じるようにしたいものだと思うこの頃である。



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