興味の尽きないワイルドおばばの新弟子となっている。
ワイルドおばばとは尊敬を込めてある人をそうひっそりと名付けていて、新弟子とは、いわばその人が代表を努めるお花のボランティア団体に所属したからである。
ワイルドおばばはお花とリンゴで見事に美味しいジャムやティーを作り、裏山でかずらを取り、皆に惜しみなく編み方を教える。低予算が故にアイデアは無尽蔵に浮かび、あちこちに見事な花を咲かせ、種は大切に保管する。
廃校の裏のボロボロの倉庫を事務所にして、僅かなスペースをバックヤードと呼び、常に種を巻き、次の花がスタンバイしている状態。
楽しそうに花の種を文字通り蒔いている姿は、おばばであって天女か童女のようだった。
おばばの元に市からの依頼があり、打ち合わせに同行した。
区役所の花壇をキレイにして欲しいとのオファーである。
おばばは役所の方と花や肥料の予算を立てる。
役所が見積りを出したのを高い!という。(笑)
雑草1個もちゃんと肥料になるんだと役所の方に草むしりをしたあと、指でほじほじしてそこにキチンと埋めてあげること。それは堆肥になること、根元の土ひとつ無駄にしてはならないこと、ほんのひとつまみの土ができるのに一体どれくらいの枯れ葉が必要かを鈴がなるような可愛らしい声で説明していた。
ガーデンのアイデアはおばばに委ねられている。場所を変えてガーデンプランをおばばメインで考える。
おばばは目を輝かせてどんな花を植えようか?あそこの目隠しは即席竹垣を作ろうか?と言っている。
『あなた、何植えたい?なんの花がいい?』
私は弟子入りしたばかりだし、プランを練るほどお花に詳しくない為に、その旨を伝え、決まったプランに従うと言うと、
『それじゃだめ。好きな花を言ってごらん』
こうキッパリと言われた。
なんだかはっとした。。
一番後ろは少し高さが欲しいし、あまり手入れができなくても花も葉も持ちがよく美しかったことから、控えめにマーガレットを縁に植えては?とアイデアを出した。
おばばは目を輝かせて、白にする?ピンクにする?と続ける。揺れる白がキレイかな?と伝えた。
なぜか、この人といると、毎回毎回、はっとする瞬間が何度もある。
はつらつと行動するおばばは、実はほとんど右手が利かなくなってきているそうだ。驚く私に、いたずらっぽく歌うようにこう言った。
~右手がだめなら左手があるじゃない?~
マーガレット花言葉『心に秘めた愛』