石からの鉱物の意識体からの贈り物とは想像を絶するものだった。
私は毎晩夢を見た。
それは私が鉱物そのものになった景色、感覚、
暖炉の赤い石からもたらされるそれは地球の創世の頃から生まれてきた長い長い生命の営み。
凍えるほどの冷たさの中、生まれたワタシは、遠くに沈む太陽を思い続けた。
赤々と沈む太陽を憧れをもって受け入れ続けていた。
少しずつ少しずつ膨大な年月をかけながら私は受け入れた眩しい存在のような姿になっていった。
何度も何度も天変地異を繰り返し、噴火し沈み隆起しながらワタシはワタシの母である地球と苦難と悦びを共に生きている。
それはイノチそのものの成長していく姿。。
脆弱から強靭へと向かう旅の途中。。
母はたくさんのイノチをその身体に宿していく。
ワタシは母のイノチの振動とおよそ同じ寿命をもっているが、あっという間に振動が終わって繋がっていくイノチもあった。
その中に人間もあった。
瞬きほどの生。瞬きほどの文明。
ワタシはその眼で新陳代謝をくりかえしていく人間をじっと見つめていた。
せつないほどのはかないイノチ。。
私はそれから宝石を買い続けている。
海のように碧い石。
深い森のようなエメラルドの石。
透明な風のような石。
大地の血液のような濃いえび茶の石。
金星の輝きのような黄色の石。
月の雫のような乳白色の石。
彼ら鉱物たちの見せてくれる創世記。
それぞれが反射し吸収してきた物語。
碧い石は海の物語を。
緑の石は植物たちの働きを。
えび茶の石は大地の熱を。
黄色の石ははるか遠くの星星の記憶を。
乳白色の石は月と命の死と誕生を。
それは久遠ともいえる悠久の時の物語だった。
(あなたがたは、これほどの膨大な生命を運命づけられて‥孤独ではないの?)
私は時に涙ぐんだ。
(いいえ 私達は孤独という感覚はあなた方のように持ち合わせていません
ただ、哀しみのようなキモチはあります
それは、私達を採掘している子どもたちを見つめているとき‥
それは私達鉱物の母である地球から滲み出す思いです)
私はついに生涯子を持つことはなかったけれど、
私がこの大きな石たちを買い続けることにより、
反転した世界のどこかの子どもたちを養い育んでいるような不思議な充足感に満たされていく。
私は守ることしかできなかった人生を、この石たちとの出会いによって放出させた悦びに打ち震えている。
宝石を肌身放さず身に付け出歩く私を、身内、ご近所は眉をひそめ、たしなめてきた。
どんな噂話が立ち上っているのかは容易に想像にかたくなかった。
もっともらしく説教する身内は言葉とは裏腹に獲物を狙う猛獣のような三角の目で石たちを査定している。
私にもしものことがあった時には禿鷹のようにこの石をついばみ、売り飛ばすつもりなんだろう。
海と森と太陽と大地と風と星星と月の物語は想像を絶するほどの愛により正確なバランスをもって運営されている。
やがてついばまれていく私の資産もその運営の中に組敷かれている。
私はその久遠の河の流れを美しいさえ思った。
つづく。☆