『ゆうくんのうそ』最終回
「ゆうよ。これからできるだけでよいから、人のついたうそに大きな心でつきあってあげるのじゃよ。
ゆうが今感じた誇らしいきもちを相手にプレゼントしてあげるんじゃ。」
プレゼント…!!
「そうじゃ…そしたらの、その小さなうそは、やがて未来への希望にかわっていくものなんじゃよ。」
未来への希望…!!
「そのためにはな、たった1人でいいから。
たった1人でいいんじゃ。
そのうそを、しっかりと抱きしめてあげなければいかんのじゃ。」
おじさんは、大きな手と胸で、ゆうくんの体を、ぎゅっと抱きしめました。

それはまるで、この宇宙すべてに守られているような強さとやさしさでした。
(ぼくはおとうさんを知らないけど、おとうさんって、こんなかんじなのかな…)
「ゆうよ。おまえならできると、おじさんはみこんだぞ。
ゆうの手で…………」
ガタン。
玄関のドアをあける音で目がさめました。
「ただいま…」
もう長いこと、笑うことを忘れたおかあさんの顔が、台所の薄暗い蛍光灯に照らされていました。
いつもなら、小言をいわれるのがいやなゆうくんは、寝たふりをしていましたが、
今日はありったけの勇気をふりしぼって起き出しました。
「おかえり。
おかあさん、あの、えっと。
おかあさん大好き…」
ゆうくんが一番言いたかったことでした。
胸の中の根雪がとけて、出てきたつぼみのような言葉でした。
キョトンとしたおかあさんの顔は、薄暗い蛍光灯の灯りでもわかるほど
ゆっくりと頬が赤くそまっていきました。
部屋に戻ると、しっかりと閉めていたはずの窓がほんの少し開いていて
一枚の小さな羽根が枕元に落ちていました。
(おじさん。。ぼく、がんばってみるよ)

羽根は月あかりに照らされて、一瞬、キラキラと光っていました。
~おしまい。