『あなたの周囲にいた人は、たしかにひどい人ばかりです。
しかし、その卑怯な人間をひきつけたのはあなたなのです。
他人を操作しようという人間にとって、あなたは魅力ある人間だったのです。
もっと厳しいことを言えば、自己主張のある人にとってあなたは魅力のない人間だったのです』
彼は反論しなかった。そこでさらに話を続けた。
『あなたは、いつも不機嫌でしたね。いや、不機嫌というよりも、ちょっとしたことですぐに不機嫌になりましたね。
なぜだかわかりますか?』
彼はしばらく考えて
『わからない。わからないけど私はそのような自分の不機嫌に苦しんできました』と言った。
『それは、あなたが本当の感じ方からすればノーと言いたいのに、他人の望むことをす(べき)だという眼に見えない圧力に屈して、イエスと言い続けてきたからですよ。
イエスと言うことは本心ではない。
本心ではないことをやりつづけて、あなたは慢性的不満症だったんです。
その不満が他人のちょっとした言動が引き金になって爆発していたのです』
かれは黙って聞いていた。
『他人を操作しようとする人間の本性がわかったのだから、もうそんな人と付き合うのは金輪際やめなさい。
“べき”を声高に叫ぶ人の本心ほど、ウソに満ちているものはないのです』
黙っていた彼は口を開いた。
『自分は小さい頃から自己主張を禁じられて生きてきた。
だから内心では自信がなかったんでしょうね』
『内心に自信がないから、他人の望むことを常にしていないといられないんですよ』
少し厳しいが彼に言った。
『自信』より。
加藤諦三さん。。☆
*無一文になった財閥の御曹司との会話。