『まずは自然の命というものに対して、もっと感謝して暮らさななりませんな。
今の人は空気があって当たり前、
木があって当たり前と思ってますけど、
水がなかったら命がありませんのやし、生命も育ちませんな。
今の人は自分で生きてると思うていますが、
自分が生きてるんやなしに
天地の間に命をもらっている
木や草やほかの動物と同じように生かされているということ、
それを深く理解せなあきません。
自分だけで勝手に生きていると思ってると、ろくなことになりませんな。
こんなこと、仕事をしていたら自然と感じることでっせ。
本を読んだり、知識を詰め込みすぎるから、肝心の自然や自分の命がわからなくなるんですな。
知識はあまり植え付けんほうがいいと思いますな。
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やっぱりたった一本の木でも、
それがどんなふうにして種がまかれ、
時期が来て仲間と競争して大きくなった、
そこはどんな山やったんやろ、
風は強かったやろか
お日さんはどっちから当たったんやろ、
私ならそんなことを考えますもんな。
それで、その木の生きてきた環境、
その木の持っている特質を生かしてやらな、
たとえ名材といえども無駄になってしまいますわ。
ちょっとした気配りのなさが、これまで生きていた木の命を無駄にしてしまうことになるんやから、
われわれは十分に考えななりませんわ。
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まあ、こんな時代ですが、
ちゃんとした仕事しよう思ったら自然のことを忘れたらあきませんわ。
どんなにしても人間は自然から逃れられませんし、
その自然の中では木や草とそんなに変わらしませんのやから。』
『木のいのち木のこころ』より。
最後の宮大工棟梁
西岡常一さん。。