『これはすごいことでっせ。
それもただ建っているというんやないんでっせ。
五重塔の軒を見たらわかりますけど、
きちんと天に向かって一直線になってますのや。
千三百年たってもその姿に乱れがないんです。
おんぼろになって建ってるというんやないんですからな。
しかもこれらの千年過ぎた木がまだ生きているんです。
塔の瓦をはずして下の土を除きますと、
しだいに屋根の反りが戻ってきますし、
鉋(かんな)をかければ今でも品のいい檜(ひのき)の香りがしますのや。
これが檜の命の長さです。
こうした木ですから、
この寿命をまっとうするだけ生かすのが大工の役目ですわ。
千年の木やったら、少なくとも千年生きるようにせな、
木に申し訳がたちませんわ。
そのためには、木をよくよく知らなならん。
使い方を知らななりませんな。』
『木のいのち木のこころ』より。
最後の宮大工棟梁
西岡常一さん。。