祖母は厳しい人でした。
私は毎日、泣いてばかりいました。
(お母さんがなくなった)
箪笥をあけると母の匂いがします。
引き出しに顔を入れて泣きました。
いたずらだった弟は、口数が減り、
独りでいることが多くなりました。
ある夕方、
ふと庭を見ると、しゃがんで何か描いていました。
首筋が、ぴくぴく動いて、泣いているのがわかりました。
からだ中が泣いていました。
お日さまはもう落ちて、
夕方が深い中を、
八郎ちゃんは、白い帽子をかぶって、声を出さずに泣いていました。
そのとき、私、決めたんです。
大人になったら、こどもに優しい先生になろう。
優しい看護婦さんになろう。
傷つき、悲しんでいる子に優しくできる人になりたいと思いました。
一年間、ほとんど学校に行かなかったのに、
優等生の最後に入れられてました。
優しい先生のご配慮でありましょうけど、
憐れまれるのは、イヤだと思いました。
だから、私は、一生、人を憐れみません。
7月の終わりの夏の日。
『約束』より。
宮城まり子さん。。

*本日のあじさい
夏日でした…☆