努力して努力してがんばる | シン・135℃な裏庭。

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(今日のお話は、昨日のつぼみと風のとしひろくんの大人になってからのことです。)



『これ、うちの子の編んだショールです』って、

どんなパーティーにもしていった。


それから、あなた女の子を好きになって


『結婚したいけどいい?』


って聞くから、『いいわよ』って


心から喜んだけど、その話は流れちゃったね。


あのこ、まだきっと、とっちゃんのこと好きよね。


………


そして、学園の隣にできた、『のどかな家』っていうのに移ったけど、


あなたには駄目ねぇ。


あそこはね、年をとりかけて、病気になって、ねむの木に入っていらっしゃった人が多いから、


ほっとくと、なんにもしない老人たちという感じになる。


だからあなた、織り機をのどかでやると、


子どもたちの声を聞かなかったり、びっくりするような色彩に逢えなかったりで、


色彩が、センスなくなるみたい。


とっちゃん、


な~にもしないで、ただ起きて、食事をして、ちょっと訓練してのんびりして、また食事して寝るだけ。


それだけでも、ありったけの人はそれでいいけど、


何かやりたいと思う人は、遊んでたら駄目。


稽古ごとは毎日やらなきゃ、駄目よ。


思いきって言うけど、


とっちゃんと40年間、わたしと一緒はあと二人だけ。


ねえ、これからあなたが生きて、99才くらいになって、


寝ては食べ、ぼ~としてご飯食べ、お風呂に入り、眠り、そんな老人になりたいの?


一生織物を織り続けて、

立派な匠が作品を残していくのと、


どっちをとるの?』


初めてである。


40年経って、こんなこと言ったの初めてである。


とっちゃんが言った。


『お、おかあさん、ぼく、ものをつくる人、職人でいたい。


一生懸命勉強する。


努力して、努力して、がんばる。


ごめんなさい。悪かった』


『そう、うれしいな、


高校専修科だよ、がんばってね』


とっちゃんの目が潤んで、


涙が滂沱と流れた。


それは美しい涙だとおもった。



……



私はきつかったのであろうか?


このままのんびりと、介護や治療に浸っていたら、


人間としてもったいない。


6才の時から40年見てきた子だ。


誰にも言われないのに、

こんなきびしい言葉、いけなかったであろうか?

何という私はいじわるな人間になったのだろうか。


楽しく、ただ笑って過ごすのも、けっこう。


それもけっこうだけど、

不思議な才能を持つ、病気を持つ子に、


私は、こんな励まし、よかったのであろうか?



一生涯勉強しても勉強してもあまることないはず。


いつまでもいつまでも


初心で造形に接するなんて、


素敵。


朝、全員教室で挨拶の時、


斉唱している言葉さえ、慣れて流れているのではないだろうか?



『わたしたちは


造形の神のたまわれた試練を


恩恵とうけとり


あらゆる困難にたえ


楽しく 強く そしてたよることなく


やさしく あくまでもやさしく


感謝し ものごとに対処し


根気よく 自分の造形に挑戦したい


心おどるであろう


これがわたしたちのやったことだと』



学校が併設された時、


まり子が職員に言われ、つくった言葉だ。


『励ますために』


と言われて……






『まり子のねむの木45年』より。


宮城まり子さん。。








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*本日のあじさい