
一人の子がいます。
自閉的で、言葉を持たないそのため
考えることのおくれた子。
そんなこと大きな問題じゃない。
抱けば、体を固くする子。
食事が出れば、食べ、
寝る時間が来れば、黙って寝る子。
まるでロボットみたいだといわれる子のこと、
私なりにわかったような気がしました。
その子は、いま暗いグレーの世界に住んでいる。
グレーの空と白い白樺の中をさまよっている。
緑色の世界のあることを教えさえすれば
クレラ・ミューラ-もガラスのようにキラキラした、
赤い彫刻も見える。
私は、そんなふうに、思い出しました。
ゴッホのミュージアムのある村で。

「また あしたから」より
宮城まり子さん