ひとつのお人形 | シン・135℃な裏庭。

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愛することと、


やさしくすることと、


ひとつのものをたいせつにすることと、


新しいものに慣れることを


たえこは少し覚えたかしら。


お人形ももってこなかった子に、たったひとつしか玩具をわたさなかった私は、


やさしくない女であろうか?


迷いながら、私はこれでよかったのだと思う。


いくつもあげたら心が散る。


1つのものに集中させたい。


3月に、かわいがってくれた保母がお嫁にいく。

おかあさんと一年、お父さんと一年、


乳児院と病院で二年、


そして、担当保母と一年で別れるのを、


どう受けとるだろうか?

「あなた、たえこをかわいがってくれてありがとう。


とてもかわいがってくれてありがとう。


でも3月にお別れなのだから、


ぴったりくっつかずに、

すこしずつ、他の保母と代わっていってね。


いじわるに思わないでね。


たえこを悲しませるのを少なくしたいの。


ごめんなさい。


でも、四歳を乗り越えたのはあなたのおかげ。」


私はあの一瞬のたえこの驚きと悲しみの表情を忘れない。


……


たえこのおしゃべりがつづく。


単語しか話せないと入園前の記録にあった。


お人形にマリ子ちゃんと

あつかましく自分の名前をつけてよかった。



保母との別れの日、


私はたえこを、初めて、

力いっぱい抱いてやらねばならないと思う。



ほら、マリ子ちゃん、



ここにいるじゃないって。。







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ねむの木の子どもたちより



宮城まり子さん