9‐21
「孤独のグルメ」
なぜか見入ってしまう。料理番組だとか飲食店を紹介する番組を見ていると、
一口食べるたびに、目剥いて鼻剥いて、びっくりした表情で、おいしいことを
やたらと過剰にこれでもかと表現している。なんだか安っぽくて嘘っぽい。
確かにおいしいかもしれないけれど、そこまでじゃないだろう。
過剰すぎて、ほんとは、きっと大して美味しくもないんだろうなぁと、興ざめしています。
一方で、井之頭五郎。目も剥かないし、鼻も剥かない。心の中で、自分にとっての
「美味しい」を表現する。的確かと言えば、過剰と言えば過剰だが、それは心の中で、
それで、十分に「美味しい」が伝わる。押しつけがましくない。それくらいがちょうどいい。
でも、見入ってしまうのはそこじゃなくて、そこもそうなんだけど、それ以上に、
井之頭五郎は、おそらく、40代後半か、せいぜい50台前半。輸入雑貨の営業マン。
それくらいの年齢で、いくら腹が減ったからといって、お昼からあれだけの量を食べられる。
定食頼んで、一品料理を頼んで、締めに麺類食べたり。昼間っからそこまで食える?
そして、会計の場面をあまり見ない(一度だけ見たことがある)が、それだけ注文したら
結構な金額になる。輸入雑貨の営業マンで、給料いいのかな?
昼飯はワンコインで。なんてくそくらえ。その数倍はするに違いない。
まさか経費で処理できないだろうし、自腹だろうし。食に対する欲求と天秤にかけて、
食が勝つということなのでしょうか。
一方で、最近よく見てしまうのが、インスタで、犬(ラブラドールレトリーバーだったり)
が人から差し出されたものを食っている。ただただ食ってる。それだけの映像。
犬だから、「美味い‼‼‼‼」と目も剥かないし、鼻も剥かない。心の中で、「美味い」を
表現しているかどうかは分からない。骨付きの肉だったり、ブロッコリーだったり、
魚介類だったり、2・3度咀嚼して、かみ砕いて、飲み込んで、その繰り返し。
骨をかみ砕く音と、咀嚼音のみ。味わっているのかどうかも定かではない。
彼らに味覚はあるのか?
そして、なぜか見入ってしまう。
出張とかに出かけると、一人で食事をする場面はよくあって、自分が食事をしている
場面をふと第三者の目線で、ちょっと離れたところから、見てみると、
井之頭五郎よりもインスタのラブラドールレトリーバーに近いような気がする。
写真は本文と全く無関係。茅ヶ崎のサザンビーチ。