8‐31

もたもたしてる間に、そこそこ席は埋まっていき、試合始まったら、売店も空くだろうから、

ビールでも買いに行こうと思ったら、四方八方席は埋まって、立ち上がれる雰囲気でも

なく、ずっと試合を見ていた。

ルールだってよく知らず、現場で見ていると、誰かが解説してくれるわけでもなく、

隣の家族づれの、長男のサッカーチームに付き合いで行ってます感が非常に強い

お母さんの「あぁ、オフサイド」って言葉に、「ふぅん、オフサイドなんだ」ってくらい。

その意味もよく分かっていない。

左隣の親子は、低学年の女の子とお母さん。ふたり。ピッチをバックに写真を撮ってる。

これは、おそらく、ピッチに立ってる選手が、若気の至りで、道ならぬ恋に走ったお相手で、

子供ができたことも告げられず、身を引き、「あれが、あなたのお父さんよ」って、

熱い目線をピッチに送り、みたいな。大きなお世話です。

とにかく、そこは、国立競技場の3階席。町田ゼルビアVS浦和レッズ。第29節。

九州や関西のチームが相手なら、空席も目立っていたかもしれないが、相手は、

ご近所の浦和。赤いユニフォームに身を包んだ人たちが国立競技場を埋めつくす。

は大げさかもしれないが、町田サポーターとどっこいどっこいの多さ。下手したら、

赤い人たちの方が多いかもしれない。熱いかもしれない。

サッカーのサポーターの人たちの応援って、あれはかなり大変。

ずっと、旗振ってるし、「ウォーウォー」とかって声出してるし、飛び跳ねてるし、

だからかどうか知らないが、野球みたいに、ビールサーバー背負った売り子の姿は

ない。ビール飲んでる暇もない。のんびり感がない。点が入るときは、あれよあれよ

という間に、ボールがゴールネットを揺らす。

1対1で前半を終え、後半も決定機を逃しつつ、30分くらいが過ぎたあたりで、

試合終了後の混雑を想像し、早めに席を立ち、トイレに行って、帰った。

その後、お互い1点づつ取り合って、だからと言って、あぁ、最期まで見とけば、

良かったともあまり思わず、その試合で、ゼルビアが首位から陥落したことを、

翌朝の新聞で知った。隣の親子は最後まで見てから帰ったのでしょうか?

選手の皆さん、雨の中ご苦労様でした。今度は、町田の山奥?にあるスタジアム

に行ってみようかしら。

 

8‐24

目の前に「妊婦キーホルダー」をぶら下げた女性が立つ。

それがなかったら、妊婦だとわからないくらいにおなかは出っ張っていない。

電車はもう地下に潜っていて、渋谷駅まではあと少しなので、席を譲る。

 

電車、いつ乗っても7人掛けのシート、そのうち約6人はいつも

スマホにくぎ付けで、そこまでして、スマホから得たい

情報もなく、四六時中繋がっていたい誰かがいるわけでもなく、

稽古本にも飽きたころだった。

「どうぞ」といって、立ち上がると、女性は「ありがとうございます」

と言って、空いた席に腰掛けた。

自分が席に着いたばかりで、降りる駅まで、まだずいぶんと時間がかかるなら、

どうしたかは分からないけど、その時は、譲った。

渋谷駅の降り口は、進行方向右側なので、桜新町あたりで、右側の扉の方に

移動。池尻大橋で、目の前の座席に座っていた、小学生の男の子が、

僕のカバンに触れて、「どうぞ」と、自分の席を譲ろうとしてくれた。

たまプラーザくらいから乗ってきた男の子だったか、お母さんと一緒に乗ってきて、

お母さんとは離れて、空いた席に、座っていた。

おそらく、僕が、妊婦に席を譲る場面を見ていたのだろうと思う。

出なければ、単純に、僕が席を譲られる対象と捉えられていたことになってしまう。

まだ、そこまで、老け込んではいないつもり。そのつもり。

 

次の駅が渋谷だったので、「次、降りるから」って、少年の行為(厚意)を断ってしまった。

次じゃなかったとしても、さすがに、「じゃ、ありがとう」と少年が空けてくれた席に

座るのは、躊躇していたと思う。

折角、勇気を振り絞って、行動に起こしてくれた、少年には、悪いことをした。

8‐17

高校野球の放送を見ていて、なぜかすごく気になること。

スタメンの選手たちは守備位置についたりするときに、

ポジションと名前が紹介される。

ベンチ入りの選手はイニングの合間にまとめて紹介される。

地方大会の成績だとか、特徴なんかも一緒に。

例えば、

「(背番号)11番、〇〇君、県大会では2番手で3試合に登板」

だとか、

「(背番号)12番、〇〇君、県大会では盗塁を4つ成功させている、俊足の持ち主」

だとか、

「(背番号)16番、〇〇君、ベンチ入りメンバー唯一の1年生」

だとか。

その中で、

「(背番号18番、〇〇君、ムードメーカー」

って、

まるで、背番号18の〇〇君は、ムードメーカーと言うポジションを守っているかのよう。

そして言葉の裏側に、野球はたいしたことないけど、バッティングの守備も、いまいちだけど、声出して、元気だとか、

そういった立ち位置が透けて見えてしまう。

たしかに、そのポジションもチームにとっては重要だとは、思うけど、

もっと、他に紹介することあるんじゃないの?って思ってしまう。