10年振りの声。

すぐに思い出が頭の中を駆け巡った。

「久しぶりだね」

そう言い合った。

「ごめん。間違ってかかっちゃったみたい。でも、かけ直してくれて、声が聞けて嬉しかったよ。」

心からそう思った。


時々考えてた。

あのまま、結婚して、家族が出来て、普通に幸せ感じながら、生きてくれてるだろうなって。

それが、一番の望みだったから。


「あのあと、どうしてたの?」

結婚しなかったって

五年程して別れたって

その後は、

昔と変わらずフラフラしてるって。

「ひとりなんだ」

『今、近くを通るところ。仕事でね。何度も来てたよ。縁があれば会えるかと思って。』

「そっか。会えなかったね。一度、会おうか?」

『会っていいのかって思うよ』

「まあね。でも、深く考えなくてもいいんじゃないの?」


何言ってるんだ、私。

合わない方がいいに決まってる。

すぐに始まってしまう。

そんな予感がするから。


また連絡するよ。

そう告げられて、終わった。


縁ってなに?

バックの中で偶然にダイヤルされたコール。

折り返してくれたコール。

それを知って自分の意思でコールした。

懐かしい声がした。

昔の合図と同じ気がした。


私から去ったクセに

こんな時だけ呼び出して。

覚悟があるわけでもないのに

続いていたような錯覚まで感じる。

無理だと言いながら

腕を捕まれた気がした。


10年も残し続けた

名前とナンバー

どこかで

消せないと思ってたんだ。

お互い、少しだけ、つながっていたかったってことなのか。


真夜中の電話を思い出す。

昔とは違って

少し臆病な気持ちで。