* S *
雅紀は約束どおり以前のような笑顔で接して
くれるようになった。
ほっとすると同時になんだか残念な気持ちに
なるのは何故だろう?
「 勝手なこと言ってんなよ 」
自分の思考が嫌になる。
雅紀にあんな寂しげな笑顔をさせて泣かせた
っていうのに…
今日の仕事は雅紀と一緒、二人きりで会うの
も久しぶりだ。
「 おはよう、しょーちゃん 」
「 おはよう、雅紀 」
いつもの笑顔、いつもの距離感…
あの日の告白がなかったかのように。
なんでだよ?
まだオレのことを好きなんだろう?
「 あの…ちょっと、しょーちゃん 」
「 ん?どうした? 」
「 どうしたじゃなくて、ちょ…近い 」
「 は?いつも通りだろ 」
「 そうかもだけど勘弁してよ 」
距離を取ろうとする雅紀の肩を抱いてグッと
引き寄せると頬を赤くして困った表情を見せ
た。
「 あのさ、オレはまだしょーちゃんのことが
好きなんだよ?
好きな人とこんなに近いとつらい 」
その言葉と態度にゾクゾクとおかしな感覚が
身体を走った。