* A *
中学1年の秋、部活が終わって帰ると母さんが
玄関で待ち構えていた。
えっ?オレなにかやらかしたっけ?
「 雅紀、おかえり
夕飯の前に大事な話があるの 」
「 あ、うん 」
怒っている感じじゃないけどなんだろう?
ダイニングテーブルのイスに向かい合ってす
わると母さんが大きく深呼吸をした。
「 あのね、雅紀
母さん、再婚しようと思うんだけどどう思
う? 」
「 へ?再婚? 」
「 取引先の会社の社長さんなんだけど、すご
くいい人なの 」
「 社長!?玉の輿じゃん! 」
「 ふふっあんたって子は先ずそこなの? 」
「 いやまぁそこだけじゃないけど…
いい人なんだ? 」
「 うん、とっても優しくていい人
それから雅紀より一つ年上の息子さんがい
るの 」
「 兄さんができるってこと? 」
「 そう、優秀な子なのよ 」
「 へぇ 」
「 もし雅紀が反対なら母さんは再婚しない
私の一番は雅紀だからね 」
「 くふふっ重っ 」
「 だって本当だもの 」
母さんはオレが小さい頃に離婚して以来、す
ごくがんばって仕事をしてオレを育ててくれ
た。
仕事が忙しくて寂しい時もあったけど、その
時はばあちゃんが一緒にいてくれた。
母さんには幸せになってほしい。
オレだって母さんが大切だし大好きだ。
それに兄さんができるなんてワクワクする。
「 オレは母さんが幸せになってくれたらうれ
しいよ
反対なんてしないから安心してよ 」
「 ありがとう、雅紀
近いうちに紹介するからね 」
「 うん 」
その日の夕飯はオレの大好物の唐揚げがお皿
に山盛りだった。