*   S   *




もしこれが最後になるのなら . . .




『 会って話がしたい 』


ふぅっ


雅紀にLINEを送って大きく息を吐いた。


40過ぎてこんな一言を送るのにどれだけ緊張

してるんだよ?


最後の最後まで自分勝手だ。

雅紀はもうオレなんかとは関わりたくないだ

ろうに。


ピコンッ


10分くらいするとスマホが鳴った。


『 仕事終わった

    今からなら行けるけど、どこ? 』


マジか…

職場から行きやすい店に予約の電話をかけ、

雅紀に待ち合わせ場所を送って自分もすぐに

家を出た。





「 ………なにここ? 」


「 急だったからここしかあいてなかった 」


たまに一人で行くバーにしたはいいが、通さ

れたのは夜景の見えるソファ席の個室。

今のオレ達の関係には不釣り合いの部屋だ。


「 すわって 」


「 ……… 」


人一人分の距離をおいて並んですわるが目を

合わせてはくれない。


「 で、話ってなに? 」


「 先に言っておくけどあまり怒るなよ 」


「 内容による 」


「 今朝の話をちゃんと聞きたい 」


「 は?そんなこと?

    こんな話、蒸し返してなんになるんだよ

    帰るっ 」


立ちあがろうとする雅紀の腕を掴んで引き留

めた。

絶対に離しはしない。


「 雅紀、頼む 」


「 だいたい20年以上も前のこと…

    いまさらどうだっていいだろ!? 」


「 いいわけない!

    自分が信じていたものが覆ったんだ 」


オレが引く気はないとわかったのか、雅紀が

荷物を置いてソファへすわりなおした。