* S *
『 あと20分くらいで着く 』
『 わかった、ご飯できてるよ 』
何度もあったやり取りだがこれまでとは違っ
てどこか甘い感じがする。
付き合いだして初めての週末だ。
今夜は大人しく別々の布団で眠るつもりは毛
頭ない。
雅紀もきっとそのつもりだろう。
出逢って15年、まさかこんな日がくるとは思
わなかった。
男同士で気にすることはなく、何度も雅紀の
裸は見たことがある。
そして同じジムへ通っているからよく知って
いる。
長い手足、程よく筋肉のついた身体、そして
肩のアザ。
今夜、あの身体に触れる。
アイツはどんな表情を見せてくれるのか、ど
んな声で鳴くのか…
雅紀はどっちのつもりだろう?
聞いたことはないが男の経験はあるのか?
まぁこれは要相談だな。
とはいえ、オレは抱いた経験しかないしそれ
を譲るつもりもない。
なんだかんだと思うところはあるけれど…
結局はそばにいてくれたらそれでいい。
マンションを見上げると明かりのついた自分
の部屋にホッと頬がゆるんだ。