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テーラーからの帰りのタクシーに乗り込むと

智くんが相葉のことを聞いてきた。


「 なぁ、翔くん

    相葉ちゃんと知り合いなのか? 」


「 知り合いというか何というか…

    偶然が重なっただけなんだけどね 」


経過を話すと智くんが眉を寄せ、責めるよう

な表現になる。


「 翔くん、それ酷くないか?

    相葉ちゃんが可哀想だろう 」


「 ……… 」


「 助けてあげたのも何かの縁だし、わざわざ

    " Lucky Man " の予約までして落とし物を

    届けてくれたってのに

    まぁ、困った客もいるから警戒するのはわ

    かるけどなぁ

    話くらいちゃんと聞いてやれよ 」


「 ………だよね 」


昨日、涙ぐんでいるようだった。

助けた礼を言っていたのに、名刺入れを届け

てくれたのにオレはいきなり金を渡した。


「 あのテーラーはオレのお気に入りなんだか

    らちゃんと相葉ちゃんのフォローしとけよ

    これは社長命令だからな 」


「 了解です、社長 」


「 相葉ちゃん、以前は◯◯(ブランド)の販売

    員だったらしいな

    どうりでセンスがいいはずだ

    翔くんのスーツもいいのができそうじゃな

    いか? 」


「 そうだね、確かにセンスはいいと思う

    接客も申し分なかったよ 」


次の予約の時、食事にでも誘うか。

誘いにのってくれるかは疑問だけれど…