「 11:00のご予約は二名様です
お一人は仮縫いの試着
もうお一人はパーティー用スーツのご相談
になります
通常はお二人同時に予約を受けることはな
いのですが今回は特別です 」
「 常連の方なんですか? 」
「 そうですね、もう何着か作っていただいて
います
お仕事で着られることが多いそうです
同じ会社の社長と副社長ですよ 」
「 そうなんですか 」
はっきり言ってオーダースーツなんてオレに
は手が出ない。
確かに着心地はいいだろうけれど値段もそれ
相応だもん。
社割がきくらしいからそのうち作ってみたい
とは思うけど…
どんなお客様がいらっしゃるか楽しみだ。
カランッ
老舗のテーラーらしいアンティークな木のド
アが開くと心地いいベルの音がしてお客様が
来店された。
「 いらっしゃいませ、大野様 」
二宮さんについていくと先ず入ってきたのは
穏やかな雰囲気の男性だった。
年はオレより少し上かな?
そして…
「 お待ちしておりました、櫻井様 」
続いて入ってきたのは昨日会ったばかりのあ
の人だった。
一度目は偶然
二度目は奇跡
三度目は必然
四度目は運命
五度目は . . . ?