* S *
コンコンッ
「 失礼します、△△社 櫻井です 」
「 おっ翔くん、来たな
聞いたぞ、やっと相葉ちゃんと付き合いだ
したんだってな 」
◯◯社の社長室へ通されると待ってましたと
ばかりに大野社長にあの話題をふられた。
「 もうお耳に入っていましたか 」
「 そりゃあ二人が恋人宣言したら噂なんてあ
っという間に取り引き先に広がるだろ
ショックを受けてる奴らも多い 」
「 恐縮です 」
大野社長とは年が近いせいもあって今ではプ
ライベートでも付き合いがある。
仕事以外では '' 大野さん " と呼ばせてもらっ
ている。
本当のことを話しておいた方がいいか…
ていうか、" やっと " ってどういうことだ?
「 よし、潤の店でお祝いするか
久しぶりに相葉ちゃんにも会いたいし 」
「 大野さん、そのことなんですが… 」
「 ん? 」
「 社長、その辺にしたらどうですか
あくまでもストーカー対策らしいってちゃ
んと話したじゃないですか 」
「 あぁ二宮さん、雅紀から聞いてますか 」
秘書の二宮と雅紀は幼馴染の親友だ。
話しているのも当然だろう。
ちなみに雅紀は大野さんと直接の接点はなか
ったがオレと二宮さん経由で親しくなった。
そして雅紀は大野さんのお気に入りだ。
しかし知っていたくせに大野さんもまったく
人が悪い。
「 なんだよ
本当にストーカー対策なのか? 」
「 そうですね
というか、それ以外に何が? 」
「 いや、もういいかげんそうだと思ってな 」
「 " そう " とは? 」
「 なんだ無自覚か? 」
いや、だからなんの話だよ?
「 社長、もういいでしょ
そろそろ仕事の話しをしてください
櫻井部長、これだけは言っておきますが…
まーくんに何かあったら許さないからな 」
「 雅紀はオレが守るから心配いらない 」
「 頼みますよ 」
それにしても無自覚?
オレが雅紀に対して何があるっていうんだ。