* S *
「 んっ…あの…しょーちゃん 」
「 何だ? 」
「 ちょっと…その…えっと 」
もちろん、わかってやっている。
雅紀は耳と首筋が弱い。
ふっ
「 ひゃんっ 」
耳を弄りながら息を吹きかけると一際大きな
声があがった。
「 しょーちゃん、それダメッ 」
「 何だよ、気持ちいいだろ?
ペットマッサージだ 」
「 気持ちいいけど…困るからっ 」
「 困るって何が 」
「 もぉっ!
オレのオレが困るって言ってるんだよ!
しょーちゃんのバカッスケベッ! 」
若干前屈みになりながら涙目で叫ぶ雅紀がど
うしようもなく可愛いく感じるオレはどうか
してる。
「 オレもう寝る!
ペットだって怒るんだからな! 」
バタンッ
勢いよく部屋から出ていった雅紀が残してい
ったカメラ雑誌を拾って見てみると、オレの
写真にいくつも付箋を貼って書き込みがして
あった。
雅紀は何事にもひたむきで一生懸命だ。
オレの食事面も考えてくれているし、アシス
タントの仕事もがんばってくれている。
雅紀の存在はもうオレの生活の一部だ。
笑った顔、怒った顔、憂いを帯びた顔…
そんな一つ一つの表情を撮りたい。
そう思うようになっていた。