魔法陣から雅紀が消えてこの世界から完全に
いなくなった。
もう二度と会うことはない。
はぁっ
雅紀のことを思い出してはため息がでてくる
が沈んでばかりもいられない。
オレには国を守るための仕事が山のように待
っている。
そして宰相たるオレが情けない顔を部下達の
前に晒すわけにはいかない。
昼間は仕事に追われ、夜は眠れなくて酒に頼
る…
そんな日々を送っていた。
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ある日、庭園を通って宰相室へ戻ろうとする
と明るい笑い声と歌声が聞こえてきた。
鼻にかかった甘い声。
まさか、マサキ!?
そんなはずはないのに声のする方へ行くと踊
り子が踊っていた。
そういえば、明日の祝いの席に呼んだという
話を聞いている。
マサキも歌って踊るアイドルという仕事をし
ていると言っていた。
それにしてもあの後ろ姿は…
しばらく見ているとオレの視線に気付いたの
かその踊り子が振り向いた。
「 嘘だろ…マサキ!? 」
「 え?なんでオレの名前を知ってるの? 」
「 マサキなのか? 」
「 そうだけど、アナタはだれ? 」
「 オレはショウだ 」
「 ショウさんはお城の人?
ごめんなさい、うるさかったですか? 」
「 いや…見ていてもいいか? 」
「 くふふっいいですよ 」
明るい陽の下でマサキが歌い、踊り、そこだ
けがキラキラと輝いて見える。
「 マサキ… 」
「 え?ショウさん… 」
マサキが近づいてきてオレの頬に触れ、いつ
の間にか流れていた涙を拭ってくれた。
「 なにか悲しいことがあった? 」
「 あぁそうだな… 」
マサキの手が優しくオレの手を握ると懐かし
いぬくもりが戻ってきたように感じる。
「 マサキ、そばにいてくれ 」
あの日、叶わなかった願いをもう一度口にし
た。
「 うん、いいよ
ショウさんのそばにいてあげる
だから泣かないで 」
運命だと思ってもいいのだろうか?
そう願わずにはいられなかった。
おしまい
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お付き合いありがとうございました。