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取材撮影旅行を終えて東京へ戻ってきた。
今回は雅紀の影響を強く受けたように思う。
もちろん、いい意味でだ。
帰ったら早速原稿に取り掛かろう。
「 しょーちゃん、明日の朝ごはんの材料だ
け買い物していってもいい? 」
「 疲れただろう?無理しなくていい
明日の朝は雅紀が行きたがっていたカフェ
へモーニングに行こう 」
「 ホント?やった! 」
そんな会話をしながらタクシー乗り場に並ん
でいたところだった。
「 うそ、雅紀!? 」
「 え? 」
誰だ?
振り向くと見知らぬ女が雅紀の服を掴んだ。
「 今どこにいるの?
会社が倒産して寮にいられなくなったんで
しょ?
連絡も取れなくなってるし 」
「 連絡って…なんで? 」
服を掴む左手の薬指には指輪が光っている。
雅紀の昔の女か?
「 雰囲気変わったね
なんだかすごくカッコよくなった
ねぇ、連絡先… 」
「 失礼、うちの雅紀に何の用ですか? 」
雅紀の腰を抱き寄せて女の手を外す。
「 うちの? 」
「 えぇ、雅紀はオレのモノですが何か? 」
「 どういうこと? 」
「 アナタには関係ないから…
結婚したんだね、おめでとう 」
「 雅紀、もういいだろう
タクシーが来たから行くぞ 」
「 うん 」
また触れようとする女から距離を取り、ちょ
うど来たタクシーに雅紀を先に乗せた。
あの雪の日のことを思い出すとこの女が多少
なりとも関係しているのだろう。
「 二度と雅紀の前に現れるな 」
まだ何か言いたそうな女に吐き捨ててタクシ
ーへ乗り込んだ。
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どうでもいい女なので名前もなしで。
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