* S *
目が覚めると雅紀がいなかった。
やっぱりか…
寝ている間に出て行ったようだ。
もしかしたら金目のものがなくなっているか
もしれない。
はぁっ
人に裏切られることには慣れている。
アイツもそうだったというだけだ。
ベッドから降りてリビングへ向かうといい匂
いがしてきて、ドアを開けるとキッチンに立
っている雅紀が振り向いた。
「 しょーちゃん、おはよう
勝手にキッチンを使ってごめんなさい
お腹すいちゃって… 」
「 オマエ、逃げなかったんだな 」
「 逃げないよ
オレはしょーちゃんに拾われたんだから 」
「 そうか… 」
「 うん、そうだよ
ねぇ、しょーちゃんも一緒に食べない? 」
「 あぁ 」
「 しょーちゃん、お仕事は? 」
「 今日は家でやるから出かけない 」
「 そうなんだ
じゃあさ、後でスーパーへ散歩に連れてい
ってよ
この家、食べるものがないんだもん
ペットにご飯買ってください 」
「 ……… 」
「 聞いてる?飼い主さま 」
「 ふはっ!はははっ! 」
「 へ?なに? 」
真剣な顔でそう言う雅紀に笑いが止まらなく
なった。