* S *
雅紀の隣に横になって寝顔を見ると目尻にう
っすらと涙のあとがあった。
どうして泣いていたかなんてどうでもいい。
逃げずにここにいる。
それがすべてだ。
涙にそっと触れると寝返りをうって背を向け
てしまった。
その背中を抱きしめ、うなじにクチビルを寄
せるとフワリとシャンプーのいい香りがして
柔らかな髪が鼻先をくすぐった。
「 んっ 」
ビクッと雅紀の身体が震えて緊張が伝わって
くる。
寝たふりをしているのはすぐにわかった。
大人しくついてきて逃げもしないからこうい
うことに慣れているのかと思ったがそうでも
ないようだ。
" ペットとして飼ってやる "
コイツはそれをどう受け取っているのか…
まぁいい、とにかく今日は疲れた。
このぬくもりを抱いていればいつもよりはよ
く眠れるだろうか?
「 しょーちゃん… 」
雅紀がオレの名前を呼んだ気がしたが、抱き
心地のよさに意識が薄れていって久しぶりに
深い眠りについた。