ピンポーン
インターホンの音で我に返った。
「 誰だ? 」
モニター画面を見るとそこには雅紀が映って
いる。
どう接していいかわからないが、せっかく来
てくれたんだ。
きちんと話をしないと…
「 今開けるから入って 」
ガチャッ
「 おつかれさま、どうぞ? 」
頃合いを見計らってドアを開け、室内へ促す
が雅紀は靴を脱ごうとしない。
「 ここでいいよ、これを返しに来ただけだ
から… 」
差し出された手のひらには鍵がのっていた。
「 しょーちゃんちのカギ…
預かってたから返しにきた
体調は?もう大丈夫? 」
「 体調はいいよ、ありがとう
雅紀、あの… 」
「 えっ!? 」
" 雅紀 " と呼んだことに驚いたのか、今日初
めてきちんと目が合った。
黒目がちな印象的な瞳…
顔色は少し悪いが、映像やグラビアで見た通
り綺麗だ。
「 あぁ、雅紀って呼んでいたみたいだから…
いいかな? 」
「 ………うん
じゃあ帰るね、また収録のときに 」
「 待って! 」
玄関ドアに手をかけて出ていこうとする雅紀
の腕を思わず掴むとビクッと身体が震えた。
「 オレ、雅紀に酷いことをしていたよな?
何故そんなことをしていたかわからないけ
れど…ごめん 」
「 わからないのに謝らなくていいよ 」
「 いや、でも… 」
「 こうなったのはさ…
きっと、しょーちゃんはもう嫌になった
んだよ…オレのことが 」
「 そんなわけないだろう! 」
「 そうなんだよ
だからもういい、全部忘れたままで… 」
ポロッ
真っ黒な瞳がゆらゆらと揺れて涙がこぼれ落
ちた。