*   A   *



「 まー!荷物これで最後か? 」

「 ごめん、潤
    トラックにあと一つあるから取ってくる 」

「 了解 」

これからしばらく同居人となる同僚の潤に声
をかけ、エレベーターでマンション駐車場へ
りていった。

ボーッとパネルの数字を見ながら考えるのは
これからのこと。

はぁ〜ホント、どうしよう。

8年前…

父さんの会社が倒産して、借金の返済と生活
のためにホストになった。
だけど家族そろってがんばって、先月やっと
返済が終わった。
父さんはもうホストはやめて、オレには自由
に生きていってほしいと言ってくれたんだけ
ど…

大学をやめてホストとして働きだした。
幸いお客さんがついてくれてなんとかここま
でやってこれたけれど、もう20代も終わる。

潤みたいにキングって呼ばれるくらいになれ
ば違うんだろうけど…

そもそもオレがホストに向いているかという
と疑問だ。

だからと言って今さら他の仕事もなぁ…

で、このタイミングでアパートの契約更新が
きて悩んでいたら潤がとりあえずうちにくれ
ばって言ってくれたんだ。

はぁ…

ついついでるため息。

いつまでも潤の家で世話になるわけにもいか
ない。

そんなふうに考えごとをしながら荷物を運ん
でいたのがいけなかった。

荷物で前が見えなくて、それにあと少しで潤
の部屋って油断していて…

ドスンッ

カシャンッカランカランッ

「 痛ぇな、おい 」

人がいることに気がつかなくて思い切りぶつ
かった。