近年の整形外科の投薬治療は、①骨を強くする、②痛みをとる、③炎症を抑える、という、3つの目的に分類できます。

今回は、長年自分で経験した症例、他院の治療例などから、「②痛みをとる」について、投薬(内服および注射)の必要性、適切な投与量、適切な投与期間、投与に適切な年齢を再検討しました。

NSAIDs(非ステロイド消炎鎮痛薬 図 ジョウロ):いわゆる一般的な「痛み止め」で、炎症部位の炎症物質に直接作用して痛みを軽減させます。NSAIDsは漫然と使用し続けると腎臓に負担がかかるため、痛みが軽減したら減らしていくことが大切です。痛みが出ると怖いからといって漫然と使用し続けるようなことがないよう注意が必要です(「整形外科で多用される痛み止めとシップの功罪~それって、効いてる?」参照)。

ステロイド(副腎皮質ホルモン薬):ステロイドはリウマチやリウマチ性多発筋痛症、結晶性関節炎に使用するもので、通常、打撲や骨折、神経痛には使用しません。また副作用(ステロイド性骨粗鬆症、消化管出血、ムーンフェイスなど)が量・期間に依存して生じますから、病状に合わせて細かく調整する必要があります。次回、正直整形外科「医療事故から逃れる方法5“お勧めする内服治療 3”」で詳細に説明します。

オピオイド薬(図 ハサミ):強い鎮痛作用を示す医療用麻薬で、脊髄と脳に存在するオピオイド受容体に結合することで、脊髄から脳への痛みの伝達をブロックします。しかし副反応として多幸感が発生するため、依存性が懸念されアメリカでは社会問題となっています。

ガバペンチノイド(カルシウムチャンネル阻害薬 図 スパナ):神経障害性疼痛に対しての鎮痛薬として用いられます。神経が痛み刺激を受け取るのを脊髄レベルで阻害し、鎮痛効果を示します。主な副作用としては、めまい、眠気、ふらつきがあります。服用後副作用が見られた場合は、転倒への注意はもちろんのこと、車や自転車の運転もできるだけ避けましょう。

デュロキセチン(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬 図 応援団):神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン)の脳細胞への取り込みを阻害することで、脳から痛みを抑える信号を強めて痛みを感じにくくする薬です。うつ病の薬も同様の作用機序で、発売当初は痛みが強いと鬱っぽくなるので、抗うつ薬が痛みに聞くという説明がされていました。

アセトアミノフェン、ノイロトロピン(図 氷嚢):比較的副作用の少ない薬で、ある程度量を多く服用しないと効果が少なく、“痛み”専門医の大家はアメリカと同様に大量を投与しらいいと豪語していましたが、そういう問題なのでしょうか?そもそも効かないのでは?と思いますが。

 

“慢性疼痛”≒“神経障害性疼痛”は「病気、怪我、手術の強い痛み刺激が長時間にわたって加わると神経系に歪みが生じ、痛みが脊髄や脳に記憶され、この記憶が大脳を刺激することで、痛みの刺激がなくても脳は痛みを感じる」と解釈されています。この定義の元、慢性疼痛治療薬が保険適応され、2010年に発売されました。発売当初、これで整形外科領域の疼痛治療が大きく変わると期待していましたが、結局、疼痛治療が大きく変わったとは思えず、むしろ薬剤種類と投与量が増え乱用されているだけに感じます。また当初は少なくとも3週間疼痛が軽減しない例に処方するよう指導されましたが、いつのまにか外来初診時に我先にと整形外科医が、そのうちに他科医師も競うように処方しています。また副作用として嘔吐や便秘が必発なので、吐気止めと下剤が同時に処方されますから、一気に内服量が増加します。そして添付文書には「本剤による神経障害性疼痛の治療は原因療法ではなく対症療法であるから、疼痛原因である疾患の診断及び治療を併せて行い、本剤を漫然と投与しない」とありますが、こんなことを考えて診察、処方する医師は皆無です。川口浩医師は、多くの患者が訴えている一般整形外科疾患の痛みは「神経障害性疼痛」ではないから、神経障害性疼痛治療薬は「適応外使用」されており、多くの患者が不適切な治療を受けているだけでなく、国民の血税が無駄に使われていると述べています。また腰痛、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによる神経根性の疼痛、関節症の疼痛などにこれらの薬が有効であることを示した報告は皆無で、学術的根拠に基づいて患者に対峙する矜持を忘れてはいけないと警鐘を鳴らしています。


column

春にオクラの種をまき、発芽を心待ちにするも一向に芽が出ません。種が入った袋を確認すると、 気温が25以上で発芽するとあります。そんなに敏感なものかと思っていたら、ぽかぽか陽気で25度以上の日が続き始めたら、土から芽が覗き始めました。1865年にメンデルが報告した遺伝子には、発芽の温度設定までが刻まれており、条件が整えばさまざまな生命機能が動きだすのだと感心しました。さて、人間はどうでしょう。身体内のいろいろな酵素が働く温度範囲はあまり広くなく、温度が高すぎても低すぎても効率よく代謝を行うことができません。 体内酵素が働きやすい一定温度を維持する仕組み“ホメオスタシス(生態恒常性)”は、体温以外にも身体に不利な変化が起こると安定状態に戻そうと作動します。 例えば、体温が下がると鳥肌になり毛穴から体温が逃げるのを防ぎ、筋肉が不随意に震えて熱を発し体温を上げます。しかし、体温を下げる痛み止めを常用すると体温調整が利きにくくなりますから、当然、代謝機能に影響が出ます。またウイルス感染時は保存瓶の煮沸消毒よろしく、身体温を上げてウイルスを不活性化するので、体温を下げ過ぎると不活性化が出来ず罹病期間が延びます。痛み止めは上手に使えば人間にメリットが大きいと思いますが、乱用は身体機能にとってマイナスです。

 

次回は、正直整形外科「医療事故から逃れる方法6“お勧めする内服治療 3”」

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