今回は肘関節痛を外傷と慢性痛に分けて解説します。

外傷は肘を打撲した場合と、転倒時に手をついた場合があります(図2a-c)。

肘の打撲では、子供に多い上腕骨顆部骨折や大人に多い上腕骨顆上骨折(紫〇)、肘頭骨折(黄色〇)があり、腫れと疼痛が強く肘関節の屈伸が困難になります。これらはレントゲン撮影すれば判定は容易です。しかし内・外側測副靭帯損傷(内側:水色〇、外側:赤〇)はレントゲン判定が困難で、圧痛部位と痛みの程度から判定します。外側測副靭帯損傷は前腕内反で激痛が走り(図2赤)、内側測副靭帯損傷は前腕外反で激痛が走ります(図2水色)。疼痛の程度で重症度が把握でき、重症の場合は手術が必要です。

見逃されやすい骨折に、橈骨頭骨折(ピンク〇)があります。これは肘を伸ばした状態で手をつき転倒した際、全体重を肘で受けたときに生じます。肘の曲げ伸ばしは何とか出来るものの、ピンク〇のエリア(筋肉の奥)に鈍痛があります。レントゲンで判明しない場合があり、MRI撮影が必要です。橈骨頭骨折のポイントは“肘を伸ばして手をつき、全体重を肘で受けた”です。

慢性痛には上腕骨内上顆炎(いわゆるゴルフ肘:青〇)と上腕骨外上顆炎(いわゆるテニス肘:緑〇)があります。これらは、スポーツや農作業、日常生活動作の繰り返しが原因で、原因となる作業をすると疼痛が強くなります。巷ではいろいろな装具が販売されていますが、筋疲労による筋腱付着部の炎症が原因なので、まずはスポーツや作業後にしっかりクーリングしましょう。作業は小分けにすることと、スポーツは痛みの出ないフォームに修正しましょう。硬くなった筋肉をストレッチすることが非常に重要ですので、ちょこちょこ前腕ストレッチを行いましょう(図3)。

 変形性肘関節症は、肘を酷使するスポーツ(野球、やり投げ、柔道、重量挙げなど)や職業(建設作業、重機を使用する職業など)、骨折などの外傷、関節炎などで、関節の軟骨がすり減り安定が悪くなり骨が変形することで、肘の動く範囲(可動域)が狭くなり痛みが生じます。生活に支障が出れば骨棘を切除したり、人工肘関節手術が必要ですが、術後は重労働やスポーツに制限が生じます。

 野球肘は、投球動作を繰り返すことで離断性骨軟骨炎や骨端軟骨損傷、靭帯損傷などが生じ、進行すると将来的に変形性関節症となります。違和感や疼痛が生じた段階で、運動量、運動強度の調整や、フォーム修正が必要です。軽い痛みがある時に敢えて投球動作をし、“痛みを誘発しないフォーム”を探すことが出来れば、それが自分に合ったフォームと考えてください。

 肘内障は他人が幼児の手を引っ張った後、幼児が腕をだらんと下げ、肩や手首が痛いと訴えます。重要なことは、“転倒による骨折可能性の有無を確認する”ことです。肘内障であればレントゲンは不要で、骨折であれば整復動作で骨折が悪化する可能性があります。整復後数時間は違和感があるので、幼児は手を動かしませんが、翌日までには肘を曲げ始めます。また成長し関節が安定すれば、再発しにくくなります。 


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 プトレマイオスがまとめ上げた天動説は、無数の規則を組み合わせて天文学的問題を説明しました。その後、ガリレオが近代科学的手法を樹立し、コペルニクスとケプラーがその手法を用いて地動説を完成させました。それはたったの一つの理論で、すべての天文学的問題を説明可能にしました。これをきっかけに、自然の物理法則を考えるうえで、「シンプルで美しい」が非常に重要な評価基準となりました。物理学の魅力は、少ない規則で多くの物理現象を一斉に説明できることにあります。一方、医科学に関していえば、自分が学生だった30年前の医学書内容は、現在の高校生物教科書に多く記載されており、医科学の進歩は目覚ましいものがあります。しかし人間の本質部分を考えるヒューマンサイエンス領域では、いろいろな健康情報が本やネットで大量に発信され、みんながその情報に振り回されている感があります。物理学のように、人間の本質部分においても、「シンプルで美しい」ものが法則または真理である気がします。いろいろな情報に惑わされることなく、「シンプルに美しい」自分の理論を築くとすれば、私は“規則正しい生活”が、古今東西変わらぬ人間の真理と考えています。

 

次回は正直整形外科「上肢痺れのトリビア」です。