五十肩すなわち肩関節周囲炎は、その名の通り50歳代から陥りやすく、原因には肩関節機能の経年劣化もありますが、ちょうど4050歳代の頃から悪化する姿勢が大きく影響します。良姿勢時とくらべ(図1a)、不良姿勢で肩甲骨は外前方へ偏位します(図1b)。たとえば正しい姿勢であれば腕は無理なく頭部まで届きますが(図2a)、猫背になると肩甲骨が前方に傾き背中に張り付いて動きにくいため、上腕骨は肩甲骨に引っ掛かり頭部まで挙がりません(図2b)。そして肩周辺筋腱に負担がかかり、さらに可動域が狭くなり夜間痛も出現します。これは猫背で肩甲骨の可動性が低下し、肩甲上腕リズム(図3)が崩れてしまっているからなのです。

 肩関節運動は上腕骨と肩甲骨の連動性が重要で、“肩甲上腕リズム”と呼ばれています。肩関節が外転90度の時、上腕骨が60度、肩甲骨が30度動きます。外転150度の時は、上腕骨100度、肩甲骨50度動きます(図3b)。すなわち、甲上腕関節と肩甲胸郭関節(図3a)が2対1の比率で関節運動に関与します。一方で五十肩の場合、肩関節外転50度の時、上腕骨の45度に比べ肩甲骨は5度程度しか動かず、肩甲骨の不動性が顕著になります(図3c
 まずは日常生活で“良姿勢”に気を付ける事が重要です。肩の痛みや可動域制限がある場合は、無理して腕を挙げようとしせず、まずは背中に張り付いた肩甲骨だけを動かすストレッチが必要です(図4)。

 肩甲骨ストレッチ(図4):まず良姿勢で両腕を垂らしニュートラルな状態とします(図4a。脇を開かずに肩甲骨だけを上に引き挙げます(図4b)。一旦ニュートラル戻し、次に肩甲骨を後方に動かし肩甲骨同士を近づけます(図4c)。またニュートラルに戻し肩甲骨だけを下に引きさげます(図4dまたニュートラルに戻し肩甲骨だけを前方に動かし肩甲骨同士を離します(図4e)。最後にニュートラルな状態で時計回り(図4f)、反時計回り(図4gに肩甲骨だけをゆっくりグルグル回します。ポイントは良姿勢で腕を脱力し垂らし、脇を開かない事です。

 

 


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 論理的思考法は、“帰納法”と“演繹法”の2種類に分類できます。“演繹法”は数学の証明で使用され、「公理や定理などの絶対的なルールがあらかじめあって、そのルールから導かれる個々の結果は常に正しい」という論法です。 一方、“帰納法”は、ある程度限られた例数の中からルールを見つけて、それを一般化する論法です。すなわち、物事を個別に考えるのではなく、一歩下がって「これらをむすびつけるものは何だろう」という抽象的な考え方(汎化)をし、汎化によってルールを知り、新しい状況・環境へ応用させるのです。整形外科疾患ガイドラインには日本整形外科学会だけでなく、骨粗鬆症関連学会やリウマチ学会に関するものもあり、ガイドラインの総数は20以上となります。いわゆる大学や大病院の専門医はこのガイドラインに沿って、演繹法で診断し治療を行います。しかし一般の整形外科医がこれだけのガイドラインを使いこなすことは困難ですから、帰納法を使用した診断と治療を行い、そこから弾かれた症例を専門医に紹介しています。もちろん本ブログ内容がガイドラインから外れているとは思えませんが、外来診療で多くの患者さんが訴える症状を汎化し、そこからルールを見つけ対処法を探し、一般の方がより理解しやすいように記載しています。ただし、近年ガイドラインが診療報酬削減や医療訴訟の判断に使われている感があり、つくづく世知辛い世の中になったものです。