腰椎圧迫骨折の原因は、外傷と骨粗鬆症そして病的骨折に分類できます。

外傷はいわゆる尻餅をついたり、後方にバタンと倒れることで生じます。

骨粗鬆症には加齢によるものとステロイドによるものがあります。加齢による骨粗鬆症は、もともと瘦せ型の女性、閉塞性肺疾患(慢性気管支炎や肺気腫)の方にリスクが高く、重量物を抱えたり、重量物を引張ることでも骨折します。過去に肺炎や血液疾患、突発性難聴などでステロイド大量投与された方は、骨密度が高くても骨質が悪化しています。ステロイド開始後数か月で、重量物挙上などのイベントが無くても折れることがあります。

病的骨折は癌の転移や多発性骨髄腫などの血液疾患が原因で、重量物挙上などのイベントが無くても折れます。

骨折の典型的症状は、臥位→座位→立位などの体位変換時に生じる腰の激痛です。その腰痛が1週間以上続き、便秘の悪化や食欲低下が出てくれば、圧迫骨折の可能性が高まります。

骨折が治癒しても腰痛が続く方が多くいらっしゃいます。しかし、この骨折治癒後の腰痛は、主に筋肉由来のものです。骨折時の疼痛は、体位変換時の鋭い(尖った)痛みですが、骨折治癒後の腰痛は腰筋疲労によるもので、午前よりは午後、午後の中でも夕方になればなるほど腰にだるい痛みが出現します。この腰のだるい痛みは、腰痛が生じる姿勢を減らしたり、押し車をついたり、休憩を挟むなどの工夫で和らぎます。決して、痛み止めやシップで改善する腰痛ではありません。

一旦骨折するとその部位で背骨が大きく曲がり重心が脊椎前方に移動し、骨折椎体に隣接する椎体前方に負荷がかかりやすくなります(図)。椎体前方は後方よりも強度が低いので、最初の骨折時より少ない負荷(転倒や重量物挙上)で隣接椎体前方が骨折し、以後、骨折連鎖が生じて高度円背に発展します。そして円背は逆流性食道炎や両脇の肋骨痛などを引き起こし、QOLを低下させます。よって再骨折を防ぐために、骨粗鬆症の治療だけではなく、片手で抱えられる重量物を両手で抱える、重量物は引かずに押して移動する、長時間の前屈姿勢を避ける(草取り時はこまめに休憩)などの工夫が必要です。


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整形外科専門医は5年ごとに更新する必要があり、講義を聴講し単位をためる目的もあり、先日福岡で開催された日本整形外科学会に参加しました。自分が整形外科医になった30年前比べ、原因が解明され大きく進歩した知見や技術もありますが、多くの疾患ではその原因は解明困難なままです。私も10年前まで研究と学会発表を行ってきましたが、人前で発表するには自分の研究結果だけではなく、新旧の文献を丁寧に調べあげ、論理的に組み立てる必要があります。よって講演を聴講することは、単に単位のためではなく、自分で膨大な作業をすることなく最新の知見を得ることができ、自分が一から勉強するよりも効率がいいのです。よって自分より年上の先生が忙しい時間の合間を利用し研究発表されるのを見ると、頭が下がる思いです。また最新の知見を得ることで、今まで疑問に感じていた問題が解決する瞬間がとても爽快です。 
次回は正直整形外科「腰痛のトリビア:腰椎分離・すべり症」です。