腰部脊柱管狭窄症は間欠性跛行(しばらく歩くと、下肢シビレ感で歩けなくなる)が有名で、その症状だけで腰部脊柱管狭窄症と診断されることが多いようです。しかし図のように、腰部脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症(下肢動脈が細くなっている)、サルコペニア(腰下肢の筋力低下)は、似たような症状を示し、鑑別が非常に困難です。

腰部脊柱管狭窄症と診断されれば、まずリマプロストが投与されます。リマプロストは神経の血流改善薬で、効果が出るまで約6週かかると言われています。この薬は1988年に販売開始され、学会や講演会などで盛んに神経根の血流改善動画が繰り返され、脊椎専門医の脳裏に焼き付きました。の後あっという間に脊椎専門医から整形外科医全体に、腰部脊柱管狭窄症=リマプロスト処方、効果が出るまで6週間というステレオタイプな認識が拡大しました。

その後、何らかのきっかけでリマプロストを休薬する経験が何例かあり、その患者らの症状はその後悪化しませんでした。そこで腰部脊柱管狭窄症についてクリティカルシンキングで再考し、リマプロストの効果発現期間6週間は、自然治癒効果が発揮される期間である可能性にたどり着きました(人間が持つ“自然治癒能力”を参照)。

リマプロストの効果は自覚症状(下肢疼痛としびれ)および歩行能力の改善とありますが、軽度の狭窄症なら歩行時の下肢疼痛は自然治癒効果で軽減するでしょうし、固定した下肢しびれは一旦出現すれば症状は手術を行っても軽減しません。また腰部脊柱管狭窄症は高齢者に発症しやすいので、そもそも活動性の低い高齢者は歩行能力で困る事は少ないようですまた腰部脊柱管狭窄症は腰を反らすような作業(長時間の草刈り機使用、重量物運搬)など、腰を反らす作業を控えましょう。よってリプロマスト処方は、狭窄症の程度が中等度で年齢の割に活動性が高く、歩行時に下肢痛が出現する方に限定されます。 

腰部脊柱管狭窄症の手術適応は、歩行距離が短く、両下肢の筋力低下または膀胱直腸障害(排尿、排便の感覚が薄い)がある重症の方が適応です。しかし高齢者であれば誰しも大なり小なり加齢現象で同様の状況がありますから、その場合、術後満足感は低下する傾向があります。また典型的な腰部脊柱管狭窄症に腰痛は含まれないので、腰痛を取るために手術をしても腰痛が和らぐ可能性は低く、むしろ手術による腰背部筋力低下で腰痛が悪化することも多々あります。術後にリマプロストや痛み止めを飲み続けている方をよく見かけますが、術後残存する症状は薬で改善出来ないので中止しましょう。何らかの痛みが続いている場合は、そもそも腰部脊柱管狭窄症以外に痛みを起こす疾患が存在していた可能性を示しています。くれぐれもその症状が腰部脊柱管狭窄症由来であるか、担当医に相談してください。また膝蓋腱反射テスト(いわゆる脚気のテスト)やアキレス腱反射テストをせずに、腰部脊柱管狭窄症と診断する医師は要注意です。


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 恒等式とはいかなる時でも成立する式で、我々が中学校、高校で習った方程式とは異なります。マクロ経済学教科書には、

YGDP = C(個人消費) + G(政府支出) + I(設備投資) と記載されています。

加谷珪一は「お金は教養で儲けなさい」で、経済学をシンプルに数式で記述することが出来ても、それが恒等式である以上、完璧に予測する目的には使用できないと解説しています。

人の健康も方程式というよりは恒等式のほうが説明しやすいと思います。

健康=食事+運動+生き甲斐+睡眠+ ・・・

食事の摂り過ぎは不健康につながり、運動し過ぎは怪我につながり、生き甲斐の追及はときとしてはストレスを増やし、睡眠の量と質はストレスの影響を受けます。いずれの値も定数では無く、各要素が絡みあい適度なバランスを保つ事で、健康度が上がるのでしょう。

次回は正直整形外科「腰痛のトリビア:腰椎椎間関節症」です。