整形外科疾患といえば、やはり骨折です。骨折といっても部位や折れ方によって症状の出方、疼痛の出方、治療の仕方が変わります。痛みが激しければ整形外科を受診すべきですが、“このぐらいでどうかな?”という状況が多々あると思います。ここでは部位別に簡易判定法を述べます。
打撲や捻挫などで外力が加わると、皮下の脂肪組織や筋肉、または骨が損傷します。大きな外力が加われば比較的速やかに局所が腫れますが、腫れの程度だけで骨折を判定することは困難です。そこで注目すべきは内出血です。打撲と異なり、骨折すれば必ずそこそこの出血が生じます。上肢(図1:上腕~肘~指先)、下肢(図2:下腿中央~足部)は、皮膚の下にすぐに骨があるので、骨折部はあっという間に腫れ、500円大の内出血が生じます(図1a,2a)。数日後には内出血範囲は2-3倍に拡大し、中心部はやや黄色に変化します(図1b,2b)。さらに1-2週間後には重力の影響で痛くない部分にまで内出血痕が拡大し、全体的に黄色に変化します(図1c,2c)。すなわち受傷直後の内出血範囲が500円玉程度なのに、2-3日後にテニスボール大に拡大すれば、骨折を疑ってください。
以下に各部位の骨折したときの症状を書きます。
・手足の甲は骨の数が多く、骨折しても他の骨がサポートするので、骨折部は比較的安定しています。よって手作業や歩行は痛いながらも可能ですが、手には力が入りません。
・膝関節内の骨折は表面的には分かりにくく、打撲や転倒直後から関節内出血が生じるため、1時間以内にしゃがむことが出来ず足を引きずるようになれば、骨折の可能性が高いと考えます。
・股関節の骨折は、座って足を動かす事、歩行、片足立ちが出来ません。
・骨盤の骨折は、座って足を動かすことは出来ても、歩行が出来ません。
・腰椎や胸椎の骨折は、ベッドから起き上がるときに疼痛が強く、立ってしまうと疼痛はやや軽減します。腰椎の骨折では数日で便秘になり、引き続き食欲低下が生じます。
・肩の骨折は腕が自力で挙がりませんし、手を添えても痛くて挙げれません。一方、腱板断裂は30度までは自力で挙がり、手を添えれば180度まで挙がります。
・足関節内の骨折では片足立ちが出来す、装具で固定しても症状は軽快しません。一方で足関節の靭帯損傷(高度捻挫)では片足立ちは可能で、歩行時に痛みが悪化し足を引きずります。また装具をつければ疼痛は半減します。
骨折と打撲、捻挫では痛み軽減の推移が異なります。図3のように、骨折の場合、受傷後3週間はほぼ疼痛の状況に変化はありませんが、打撲では1~2週もすれば疼痛はほぼ消失します。また靭帯損傷(高度捻挫)は、2週経過後から症状が緩和し始めます。
column
先日、虫歯の治療を受けました。以前であれば何日も通院する必要がありましたが、たった20分で治療終了でした。これには医療技術の向上も寄与していますが、現代人のライフスタイルと価値観が変化し、ダラダラとした通院治療は好まれない社会情勢が医療者の意識を変えたのでしょう。アメリカでは日本のような開業医やクリニックは無く、テレビCMで薬の宣伝が多く流れます(日本でも近年同様の傾向があります)。今後、日本でも薬は薬局で購入することが増えるでしょう。そして日常から自分の健康状態を把握し、必要な時だけ病院を受診する意識に変わるでしょう。我々医師は、単に投薬、手術、リハビリを提供するだけでなく、患者のセルフケア意識を高めサポートする役割に徹する必要があると思います。