久しぶりの森美術館。
2019年ぶりだろうか。
今回の「私たちのエコロジー」展は、情報を得て以来、見に行こうと決めていた。
印象深かった作品の一つ目は、ニナ・カネルの《マッスル・メモリー》。
約5トンのホタテ貝が床に敷き詰められており、その上を歩きホタテ貝の割れる音を聞くことができる。
ホタテ貝の殻は毎年20トン以上廃棄されており、その再利用が建設フィールドで考えられている。
しかし、再利用するプロセスには、莫大なエネルギーが消費されるという矛盾がある。
この作品は、地球上のあらゆる環境における物質の互換性を観客に考えさせるものであるが、わたしは、この作品にインストラクション・アートの側面を見た。
または、アトラクション的というか。
この作品は会場に入って二つ目の作品である。
ホタテ貝を踏まずに先に進むこともできるが、ふらりと訪れた人がこの部屋を歩く体験をしたら、ずっと記憶に残るのではないかと思う。
今回の展覧会は、いわゆる〈テキスト〉を読むことも多かったわけだけど、感性に直に伝わる作品は、それ自体、アートとして〈強い〉と改めて感じた。
また、セシリア・ヴィクーニャの《キープ・ギロク》という作品は、アンデス地方にあった「結縄文字」と、アンデス地方の布に書かれた原始的な絵からインスピレーションを得て、韓国の韓服に使われる布素材に表現している。
ヴィクーニャはチリ出身のアーティストで、グローバリズムが進む現代において消えゆく先住民族についてを考えさせようとしている。
しかし、、、、キャプションを読んだ時、わたしはアンデスと韓国がなぜ繋がったのかが理解出来なかった。
わたしは非文字の〈キープ〉というのを、家に帰ってからネットで調べてみた。
Wikipediaに〈キープ〉については詳しく記載されている。
かつて、量や数を表すのに縄に結び目を作った。
このやり方は世界中に存在したようである。
現代も数珠、ロザリオなどにこの記録方法は見られる。
今回の展覧会の一番の収穫はこの結縄文字を知ったことかもしれない。
森美術館の展覧会は、いつも満足度が高いと思うのは、おそらく知らないことを知る頻度が高いからではないだろうか。
さまざまな展覧会、その全てが知識欲を満たすとは限らない。
そして、極論、わたしに限って言えば、知識欲さえ満たされれば作品自体のあれこれは二の次なのである。
以上の2点以外にも、興味深い作品はあった。
ひとつひとつテキストを読みながらじっくり鑑賞すれば、知識欲が満たされるような多くの〈発見〉があるのではないかと思う展覧会だった。