国立新美術館で開催中の「テート美術館」展。
この展覧会で見たジュリー・ロバーツの《拘束衣 男性用》という作品。
背景の濃紺とリアルな拘束衣の表現がわたしを惹きつけた。
最初、これが何か全くわからなかった。
拘束衣?それも男子用?
作家のロバーツは幼少期に母親の職場である介護施設で育ったこともあり、医療器具と医療環境は、彼女の人生と芸術に大きな意味を持つ。
介護施設で育ったころ、彼女はスタッフや患者が使用する医療器具を絵にしていた。
美術大学に入ってからは業界カタログや、自分が撮った写真から描いた。
拘束衣をつけている人や、それが使われる背景が描かれてないところがポイントではないだろうか。
そのように描かれているのは、展覧会図録によると、臨床的観点から対象から精神的な距離を保つことが重要であると示唆しているからだという。
また、彼女の作品は「フェティシズム」を思い起こさせると、展覧会図録には書かれている。
フェティシズムとは、「特定の物や限られた身体の一部に欲望を感じる」ことで、通常は幼少期に受けた精神的トラウマの結果であるとされている。
フェティシズムという言葉をわたしは知らなかった。
◯◯フェチというふうに考えるとよくわかる。
中学生の頃の同級生に、馬が好きで馬の絵ばかり描いている人がいた。
また、ある団体展で、毎年パンばかり描いている人がいることを知っている。
彼らが続けて描くモチーフに、わたし達はフェティシズムを感じるかといえば、そんなことはないと思う。
ジュリー・ロバーツの作品を、幼児期のトラウマだ、フェティシズムを感じる作品だとは、展覧会図録を読まないと考えることもなかった。
今回の「テート美術館」展のような、コンセプトがはっきり打ち出されている作品ばかりの、現代アートの展覧会は、今まで知り得なかった事を知る機会になることがある。
会場のキャプションを丁寧に読んでもよいし、もっと知りたいと思えば展覧会図録を読む。
この展覧会は、キャプションを読まなくとも十分に楽しめると思うけど、作家の生育歴、時代背景などを知るとより深く楽しめるのではないかと思う。
(単に美しい、楽しいという作品は少なかった)