9月27日(金)、映画『本日公休』を見ました。


2023年の、台湾映画。


監督・脚本は、フー・ティエンユー。


彼女が、自身の母親をモデルに書き上げたシナリオをもとにして、台中にある実家の理髪店でロケを。


「台中の街角に佇む、昔ながらの理髪店。

女手ひとつで育て上げた子供たちも既に独立し、店主のアールイさんは今日も一人店に立ち、常連客を相手にハサミの音を響かせます。」(チラシより)


40年の歳月。


常連客は、三世代となり。


アールイは、訪れの空いた常連客には、個別に電話を。

連絡先を記した名刺をはさんだ、分厚い手帳。


息子の卒業式に整髪に来た客。

夢に現れた亡き妻から、髪は黒い方がいいと言われ、初めて、その白髪を染めに来た客。あの世での、妻との再会を楽しみにしていて。

ガールフレンドが出来、流行のヘアスタイルにしてほしいとやって来た中学生。後から、親に連れられ、もとのように短くと。泣きながら、バリカンをかけられて。


そこにある日常。

そこにある人びとの生活。


早くに夫を亡くしたアールイには、一男、二女がいて。

それぞれが独立して。

その子どもたちとの『関係』。


時が止まっているように思われる日常、その生活。

しかし、時は、確実に流れ。

アールイも、歳を重ねて、老い。


かつての常連であった歯医者。

その訪れが途絶え。

アールイは、電話で、彼が遠くの町に移ったこと、病気であることを、その家族から聞き、散髪に出かけることに。

店に、『本日公休』の看板を出して。


車を、自ら運転。

しかし、老いたうえに、慣れない運転。

ぶつけたり、こすったりしながら。

途中、水筒を忘れてことに気づき。

さらには、携帯も忘れていて。

そこでの出会い。

ちょっとした『ロードムービー』。


ようやくたどり着いた家。

しかし、その歯医者は、病重く、既に意識もなく。

アールイは、彼との思い出を、その息子、娘に語りながら、散髪し、髭を剃り。


ようやくたどり着いた、我が家。

三人の子どもたち、台湾でスタイリストを目指している長女のシン(アニー・チェン)、美容院で働いていて、新たにスーパーの中にある、最速カットを売りにする『QBハウス』で勤めようとしている次女のリン(ファン・ジーヨウ)、太陽光発電などの事業を立ち上げたいと考えている長男のナン(シー・ミシュアイ)。

が、待っていて。

そして、アールイは、歯医者の名刺を手帳からはずし。


老いは、誰にでも訪れる。

その老いを、どのように迎え、どのように過ごすのか。

40年の時間を、店に立ち続けて、膝も悪くなり。

通っている整形では、医者から、もう仕事をやめたらと言われ。

それでも、常連客の訪れを待って、店に立ち続けて。


アールイが、同世代の女性たちと、遊びに出かけて。

はしゃぐ、彼女たちの姿。

そこには、日がふりそそいで。


悪人がひとりも出て来ない。

皆、どこにでもいる人物たち。

皆、善意にあふれて。


自らの『老い』を考えながら、心が、ほっこりと。


気になったのが、理髪店。

その入口に、『家庭理髪』と、赤く。

その脇に、

『學生頭』

『山本頭』

『西装頭』

『平頭』

と。

この『山本頭』が気になりました。

調べると、坊主頭に近く、こめかみ上部に美しい剃りこみのあるヘアスタイルだとか。

旧日本海軍の、『山本五十六』から来ているとの説。そうではないという説。がありで。