8月30日(金)、池袋の、シアターグリーンBox in Boxで、劇団銅鑼の『星を追う人 コメットハンター』を見ました。
9月1日(日)までの上演で、すでに終了しています。
劇団銅鑼公演No.60。
関根信一の作。
磯村純の演出。
鳥取県鳥取市にある介護施設『ケアハウス グランシャリオ』。
故郷に戻ってきた若槻真琴(山形敏之)は、介護福祉士として、そこで働き始めます。
妻の彩香(北畠愛美)は、医療事務員としての仕事が継続中で東京に残り、真琴とは、別居状態。
若槻は、施設で、入所者の老人西島健一(館野元彦)と出会います。
彼は、有名な天文家の本田実(池上礼朗)とは親友であり、その葬式に出かけるためだと言って、徘徊を繰り返し。
しかし、施設の職員たちは、それを『妄想』だとして、西島の話を聞き流し。というのも、本田実が、もしも生きていたとしたら、100歳を越える年齢で、西島と本田実が幼なじみの親友だということはあり得ないのです。
しかし、若槻は、その西島の、『リアリティー』ある話に、耳を傾けて。
舞台の時間は、2022年と、1936年からのものと、ふたつの時間が。
その1936年からの『物語』は、西島健一の『回想』の中にある、本田実の人生。
実際の本田實は、1913年、鳥取県の農家の長男として生まれ。
天体に興味を持ち、14歳頃、直径28ミリのレンズを購入し、望遠鏡を自作。
この作品の中でも、
1941年28歳の時に、倉敷天文台の台員に着任。
その年、慧(さとる)さんと結婚。
そして、召集。
戦地で拾ったレンズを用いて望遠鏡を作り、周期彗星を発見。
1946年、復員。
作品が展開していくなかで、なぜ、西島健一が、本田実の幼なじみの親友であり、その葬式に行きたがるのか、その理由が分かって来ます。
ただ、1時間40分ほどの作品。
見ながら、頭の中に、次々と『?』が瞬いて。
主人公の若槻真琴は、なぜ、故郷に戻ってきたのか?
妻との別居生活。ふたりの電話でのやり取りの、ぎこちなさ。語り合うべきことを、お互いが遠慮して、避けあっている空気。
台詞の中に、真琴が、その両親のことに触れ、両親も、妻の彩香が鳥取に来ることを待っている、と。
そもそも、なぜ、真琴は、故郷に戻ったのか、戻らなくてはならなかったのか?
施設に、高校時代の同級生が働いていて、真琴が高校の部活が『天文部』であったことを指摘されると、それを不自然にごまかして(と、見えましたが)。
なぜ、『天文部』であることから、遠ざかろうとするのか?
演出の磯村純の言葉に、
「この作品に登場する若槻真琴は元天文部で、生活に追われ徐々に星を見る事がなくなったという設定です。」(『プログラム』から)。
ただ、『介護福祉士』であるならば、東京でも、その働き口は多く。
もっとも、その仕事の内容に比較して、給料の安さ。もっと、その職場環境を改善することが必要だと思っていますが。
その真琴の『曖昧』さが、妻彩香との関係性にも。
彩香には、言わなくてはならないことがあるはず。
それは、今度、鳥取に行き、言いたい?伝えたい?ことがあると。
しかし、それは、隠されたままで。
ラスト、鳥取に来て、介護施設での『祭』に参加するのですが。
で、そもそも、西島健一。
本田実と幼なじみの親友であったというのは、実は、西島の父親であり、その本田と西島の父親との手紙を読んだ西島健一が、自らのことと。
なぜ、西島健一は、父親の人生・記憶と、同化しようとしたのか?
そこには、西島健一と、父親との、親子の関係性があったはずで、それは、どのようなものだったか?
そもそも、西島健一の人生は?
その西島健一自らの人生について、語られていないのでは。
舞台上で、それらに関わる台詞、情報が飛び交っていたのかもしれません。
『台詞ハンター』としての技術に欠けていたのかもしれません。
しかし、それぞれの人物が、舞台上に、立体的存在として立ち上がって来ないと。
そして、そこに関係性が生まれて来ないと。
台風10号の影響があり、時折、激しい雨。そして風。
ブーツを履き、レインコートをまとい。完全対策をして。
新天体発見の数が世界一と言われた天文大国日本。
そこには彗星を追い求めるアマチュアコメットハンターたちの情熱があった。
コメットハンターとは、未知の彗星の発見を目的として天体観測に取り組む天文家のことである。
新彗星12個・新星11個を発見し、「天体発見王」とも呼ばれた世界的アマチュアコメットハンター・本田實。
彼は、子どものような純粋さと超人的なパワー、誰にも負けない情熱で星を愛し続け、天体観測に生涯を捧げた
【あらすじ】
若槻真琴は介護職員。
追いかけることを諦めた人たちと
追うことに情熱をかけた人たちの時空を超えた物語。