8月10日(土)、『ボレロ 永遠の旋律』を見ました。
チラシに、
「終わらないリズム 陶酔の17分」
「その音は、魂を奪う」
そして、
「フランスの天才作曲家ラヴェルが生んだ数々の名曲と共に贈る本格的音楽映画」
チラシの裏には、
「人生のすべてが今、旋律に変わるーー
天才作曲家ラヴェルの魂を奪った魔の名曲はいかにして生まれたのか。」
確かに、物語の展開のうえでは、
「1928年〈狂乱の時代〉のパリ。深刻なスランプに苦しむモーリス・ラヴェルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼されたが、ー音もかけずにいた。失った閃きを追い求めるかのように、戦争の痛み、叶わない美しい愛、最愛の母との別れ。引き裂かれた魂に深く潜り、すべてを注ぎ込んで傑作『ボレロ』を作り上げるがーー。」(チラシ)
とあるように、依頼されたバレエの曲を書けないラヴェルは、『過去』を思い出し。それぞれの『過去』が、現在と交錯し。
そして、17分の『ボレロ』へと。
ただ、繰り返されるエピソードが、そもそも平坦なうえに、それが、どのようにして「引き裂かれた魂に深く潜」っていったのか、よく伝わって来ない。
しかも、物語は、『ボレロ』完成後も続き、軽度の記憶障害や言語障害から、やがて病に倒れてという、1937年の晩年まで。
となると、ラヴェルの『生涯』を描きたかったのか、という思いも浮かんできて。
例えば、戦争で右手を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタインの依頼によって、『左手のためのピアノ協奏曲』を作曲するエピソードも入っていて。
だったら、そのヴィトゲンシュタインと、曲をめぐって喧嘩別れしたエピソードも、おしろいのではないか、と。
この『ボレロ』も、イダ・ルビンシュタインの依頼で作曲し、しかし、曲の解釈、その振り付けに、ラヴェルが激怒したというエピソードが描かれていますが。
ただ、オペラ座での舞台、その成功を得て、ラヴェルは、『ボレロ』のなかの官能的要素を認め、和解。
そもそも、もともとがスペイン風の曲を依頼されていて。
しかも、ラヴェルの母は、バスク地方出身。
であったのに。
となると、『ボレロ』と、ラヴェルの『死』とは、どのような関係にあるのか、と。
再び、チラシに戻ると、
「天才作曲家ラヴェルの魂を奪った魔の名曲」に、行き着いて。
この「魂を奪った」とは?
監督・脚本は、アンヌ・フォンテーヌ。
『ココ・アヴァン・シャネル』(2009)、『ボヴァリー夫人とパン屋』(2014)、『夜明けの祈り』(2016)などの作品が、日本で公開されています。
モーリス・ラヴェルを演じるのは、ラファエル・ペルソナ。
彼が想いを寄せ続けるのが、ミシア・セルト(ドリア・ティリエ)。ミシアも、その想いを受けとめながら。しかし、人妻であり。
ラヴェル(1875~1937)は、62歳で亡くなりますが、生涯、独身で。
工場の機械音や、机を指ではじく音など、『ボレロ』誕生に至る、さまざまなエピソードの積み重ねは、おもしろく。
エンドロールとともに、『ボレロ』が、さまざまに演奏され、さまざまに踊られて。
個人的には、そこに一番の盛り上がりがあった、と。
『ボレロ』の、パリ・オペラ座での初演。
1928年11月。
そのバレエの場面を見ることが出来たおもしろさ。
大きな円形のテーブルが中央に置かれ、その上で、イダが踊り。
『ボレロ』というと、クロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』(1981)を思い出します。
モーリス・ベジャールの振り付けによる、ジョルジュ・ドン。
圧倒されました。
円形のテーブルは、もともとがそうだったということ、初めて知りました。
そして、あらためて、ベジャールの偉大さも。
シルヴィ・ギエムも思い出します。
と、さまざまなことを思い出し、得難い作品でしたが。