6月28日(金)、新国立劇場小劇場で、『デカローグ』の第9話『ある孤独に関する物語』、第10話『ある希望に関する物語』を見ました。


クシシュトフ・キェシロフスキ(1941~1996)監督作品の『デカローグ』。

その10篇の物語を、須貝英の上演台本で舞台化。


「ポーランド、ワルシャワ郊外の団地を舞台に、旧約聖書の十戒(デカローグ)をモチーフに、十篇をオムニバス形式で人間の脆さと普遍的な愛を描く。」(チラシ)


すでに、第1篇から、第6篇を見て来て。


今回は、第9篇と、10篇を。どちらも、小川絵梨子の演出。


『デカローグ9』。

『ある孤独に関する物語』。


十戒では、「あなたは他人の妻を取ってはならない。」


「性的不能と宣告された夫は妻に事実を告げる。夫を励ます妻だが実は妻にはすでに若い恋人がいた。」(チラシ)


40歳の心臓外科医のロマン(伊達暁)は、友人の医師から、性的不能になったと宣告され。

若い妻であるハンカ(万里紗)と結婚して10年。

子どもはおらず。

そのため、友人の医師は、ハンカのためにも、別れるべきではないか、と。


アパートに戻り、ロマンは、その診断結果を、ハンカに伝え。別れたほうがいい、と。

それに対して、ハンカは、下半身だけが愛ではないと、別れることを拒絶し。

しかし、その時には、すでにハンカには、大学生のマリウシュ(宮崎秋人)という「若い恋人」(チラシ)がいて。


チラシの「若い恋人」という表現に躊躇するのは、そこにあるのは、性的欲求の充足のための若い男というのが、ふさわしいのではないかと思うからです。


しかし、ロマンは、ハンカに若い男の存在のあることを知り。


ハンカの手帳を盗み読み。

電話も盗聴し。

「逢い引き」場所の、ハンカの母親のアパートの鍵をコピーし。


この第9話。

追い詰められていくロマン。

ロマンに秘密を知られたことで、ロマンとの関係を修復しようと必死になるハンカ。

そこに、ハンカに夢中のマリウシュがからみ。


展開が、スリリングで、舞台上の緊迫感が客席にも伝わり。

おもしろい舞台でした。


ハンカの、『下半身だけが、愛ではない』というのが、物語をまとめて。


心臓外科医として、優秀な医師であり、テレビにも出演するロマン。

おそらく、モテモテであったロマン。

友人の医師との会話にも、これまで、15人の女性と関係を持った、と。

それが、ハンカと結婚する前の話かどうかは、わかりませんが。


そして、最後の逆転?


後ろの席の女性たちが泣いていました。


舞台ではわからないのですが、ハンカがベッドて読んでいるのが、ポーランド語訳の『ガープの世界』。

※『ガープの世界』は、ジョン・アービングの小説。1978年。

1982年に、ジョージ・ロイ・ヒル監督作品として映画化。ロビン・ウィリアムズ、グレン・クローズ主演。


小説も、映画も、おもしろく。また、この第9話とつながっています。


『デカローグ10』。

『ある希望に関する物語』。


十戒では、「あなたは隣人の家をむさぼってはならない。」


「父の死により久しぶりに再会した兄弟は父の遺品によって予期せぬ事件に巻き込まれていく。」(チラシ)


パンクロックグループのリーダーであるアルトゥル(竪山隼太)は、兄イェジー(石母田史朗)から、父の死を教えられる。

父とは、疎遠な関係にあった兄弟。

しかし、遺品整理のために、父のフラットを訪ねたふたりは、そこに、膨大な切手のコレクションが残されていることを知る。

しかも、父の友人の郵趣連合会長から、それには莫大なる価値のあることを教えられ。

最初は、売却を考えていた兄弟も、その価値の、あまりの大きさに、彼ら自身も、「偏執」的に。


そのあげくに、兄のイェジは、切手と引き換えに、自らの腎臓を提供し。


その彼らを待ち受けていた、大惨事。

絶望の淵に突き落とされ。

そこに、疑心暗鬼が生まれ。


しかし、第10話のタイトルは、

「ある希望に関する物語」。


物語は、希望に満ちた明日を伝えて、終焉します。


番犬として、ロキスが登場します。

ローザが、演じていて。

おとなしく、指示に従って。

しかし、ローザ、客席が気になるのか、客席に目を凝らして。


舞台、子どもと動物にはかなわないと言いますが。