5月17日(金)、池袋の東京建物BrilliaHALL(ブリリアホール)で、前進座の公演を見ました。


国立劇場改修により、今回、この東京建物Brillia HALL へ、初お目見え。


5月11日(土)から20日(月)までの公演。

そのうち、夜公演、18時30分の公演は、この17日しかありません。


演劇界全体に、夜公演が少なくなっています。


最初の演目は、

『雪祭五人三番叟』。


この『雪祭五人三番叟』は、

「1922(大正11)年、中村翫右衛門、先々代中村鶴蔵らの勉強会『からす会』で、文楽の『風流連官三番叟』(二人三番叟)を五人で踊り好評を博したことから始まります。」(『プログラム』)

で、

「それを基に、民俗芸能に伝承された三番叟の本来の姿をたずねる中で、より豊かな新しい三番叟舞踊の敬承を求めて構成されていき、1968(昭和43)年に初演されました。」(同)


雪持ちの松羽目。

5人の群舞。


「文楽の『寿式三番叟』の曲を基調にして、前段の翁と千歳の部分を省き、いきなり『揉の段』から入っていきます。そして後の『鈴の段』までの間に、段入れを終えた村の翁や若者たちが五穀豊穣を祝って集い、新春の雪祭ー歌くらべ、舞くらべに興ずるという構成です。」(同)


この女性5人による三番叟は、はじめて見ました。


さらに、女流義太夫と三味線。

囃子方も、すべて女性。


一糸乱れぬ5人の三番叟。というわけには、なかなかいきませんが、しかし、その5人からあふれるエネルギー量の大きさ。


雪の舞い散るなかを、舞い狂い。


三番叟を、北澤知奈美、松川悠子、有田佳代、平澤愛、清水麻美。


次が、『劇場初御目見得』の口上。

劇団代表の藤川矢之輔。


『三番叟』、『鳴神』と、前進座との関わりを語り。


そして、『鳴神』。


歌舞伎十八番。

7代目市川團十郎が選定した、市川家ゆかりの18番の作品。

そのなかでも、この『鳴神』は、人気のある、上演の機会の多い作品。


前進座でも、プログラムの上演史によると、

1937年6月の、新橋演舞場。

鳴神上人を、河原崎長十郎。雲の絶間姫を、5代目河原崎国太郎。


「元禄歌舞伎への回帰を目指した」2世市川左團次、岡鬼太郎による「型と演出の流れを汲む前進座」(プログラム)

「座のレパートリーの中で、最多の1300回を数える演目」(プログラム)


今回は、鳴神上人を、初役で嵐芳三郎。

雲の絶間姫は、持ち役とする河原崎國太郎。


物語は、

鳴神上人の祈祷によって、後継の皇子が誕生したにもかかわらず、帝は、約束した京の北山に戒壇を設けることを反古にしてしまう。

それに怒った上人は、その法力で龍神を北山の滝壺に封じこめてしまう。

すると、雨が降らず、ひでりが続いて。


そこで、帝は、雲の絶間姫に命じて、その色香で上人を誘惑し、神通力を奪ってしまえ、と。


で、雲の絶間姫が、その色香で、鳴神上人を誘惑。


という物語。


修行以外のことに関しては、まったくの『無垢』な鳴神上人。


色香に迷い、『破戒』への道をまっしぐら。


物語の構図自体が、とてもわかりやすく。


また、鳴神上人、雲の絶間姫だけではなく、白雲坊の松涛喜八郎、黒雲坊の中嶋宏太郎の軽妙なやり取りもあって、物語世界に、一気に運び込まれて。


ただ、東京建物ブリリアホールの舞台、花道がしっかりととれず。鳴神上人の『飛び六法』は、花道七三から、ひとまず舞台へと下がって、『助走距離』を確保してからのひっこみ。 

それが、残念でした。