5月14日(火)、北千住のシアター1010で、『5月文楽公演』Bプロ。16時開演。


『ひらかな盛衰記』。

元文4(1739)年4月、竹本座での初演。


文耕堂、三好松洛、浅田可啓、竹田小出雲(2代目竹田出雲)、千前軒(初代竹田出雲)の合作。


角書に『逆櫓の松』『矢箙の梅』とあるように、『源平盛衰記録』をもとにして、

・木曽義仲とその残党の物語。

・梶原源太景季の物語。

が、交錯して。

全5段の、長い長い物語です。


で、今回は、木曽義仲からはじまる物語。


『義仲館の段』。

朝敵となった木曽義仲。源義経率いる鎌倉方の攻撃を受けて。その劣勢の戦いのなか、義仲は、正室山吹御前と駒若丸を、腰元お筆に託し、愛妾の巴御前とともに出陣していきます。


『楊枝屋の段』。

義仲は、粟津の合戦で敗死。山吹御前たちは、お筆の父の鎌田隼人の家に、身を寄せます。そこへ鎌倉方が押し寄せて。


『大津宿屋の段』。

山吹御前の一行は、大津の宿屋に1泊。隣あわせとなったのが、巡礼の船頭権四郎一家。どちらも、駒若丸、槌松という幼子を連れての旅。ごくごく自然に言葉をかわし。

夜中、落ち人狩りの武士たちに襲われて。

駒若丸と槌松は、取り違えられ、槌松が首をとられ。隼人も、山吹御前も、その戦いのなかで死に。


『笹引きの段』。

ひとり生き延びたお筆が、山吹御前の亡骸を笹に乗せて、落ちのびていく。

なんとも、哀切な場面。


『松右衛門内の段』。

摂津の国、福島が舞台。権四郎一家。一家は、取り違えた駒若丸を育てながら、槌松の戻ってくる日を待ちわびています。

そこに、お筆が、ようやく探し当てて。しかし、お筆の口から、槌松の死が告げられて。で、駒若丸を戻すようにとの言葉のやり取り。

ならば駒若丸の命も奪うという権四郎。そこに、婿の松右衛門がわって入り。

自分こそ、義仲側の、樋口次郎兼光であることを明らかにし。義経に復讐する機会をうかがっていた、と。


いよいよ『逆櫓の段』。

樋口次郎兼光の、義経への復讐は成し遂げられるのか。

駒若丸は、どうなってしまうのか。

物語は、多くの人々の、それぞれの思いを絡ませ、織り上げて。


物語は、この後にも続くのですが、ここで、ひとまずの区切りをつけて。


源平の争乱の時代を背景に、起伏に富んだ物語。


特に、

『笹引きの段』の、呂勢太夫と、清治。

『松右衛門内の段』

中の、睦太夫と、清志郎。

切の、千歳太夫と、富助。

『逆櫓の段』の、芳穂太夫と、錦糸。


充実した太夫と、三味線。


人形役割

腰元お筆を、和生。

船頭松右衛門実は樋口次郎兼光を、玉男。

山吹御前を、勘彌。

駒若丸を、簑太郎。

鎌田隼人を、玉佳。

船頭権四郎を、玉也。

女房およしを、勘壽

など。


こうした作品に出会えると、文楽の魅力をあらためて感じます。