4月8日(月)、『アイアンクロー』を見ました。


チラシに、

「“呪われた一家”と呼ばれた“鉄の爪”フォン・エリック一家の栄光と悲劇

〈最強〉を追い求めた家族の真実の物語」

と。


そして、

「巨大な手で敵レスラーの顔をわしづかみする必殺技“アイアンクロー=鉄の爪”を生み出し、1960~70年代に日本でもジャイアント馬場やアントニオ猪木らと激闘を繰り広げ、一世を風靡したレスラー、フリッツ・フォン・エリック。フリッツは息子たち全員をレスラーに育て上げ、苛烈な競争が繰り広げられる世界で“史上最強の一家”となる野望を燃やす。」


この、フリッツ・フォン・エリック(1929~1997)のリング姿、よく覚えています。

テレビを通してのプロレスファンで、それこそ、力道山の時代から。

そして、フリッツ・フォン・エリックが、ジャイアント馬場やアントニオ猪木との闘いも。


それだけに、強い関心があり。


監督・脚本は、ショーン・ダーキン。


冒頭は、フリッツ・フォン・エリックの現役時代のリングから。


試合を終えて、彼を迎える妻と、ふたりの男の子。


まだまだ経済的に豊かではなくて、トレーラーハウス生活。


ところが、そのトレーラーハウスを牽引する車が、妻の知らないうちに、キャデラックになっていて。

借金生活の苦情を言う妻に対して、フリッツは、『世界最強のレスラー』になることへの強い思いを伝え。


その父親フリッツに育てられた4人の子どもたち。

(長男は5歳で事故死)

で、次男のケビン(ザック・エフロン)が、事実上の長男として。

三男のデビッド(ハリス・ディキンソン)。

四男のケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)。

五男のマイク(スタンリー・シモンズ)。

(六男クリスもいるのですが、作品では5人の子どもたちとなっています)


それぞれが、プロレスラーとなり。


父親フリッツは、子どもたちを、順位付けし。その順位は、日々かわり。

互いに、『切磋琢磨』することを求め。

何か問題が生じても、兄弟で話し合え、と。


その、『兄弟で話し合え』は、母親のドリスも、子どもたちに、同じ接し方をし。


強いレスラーになれ。

チャンピオンになれ。

父親フリッツ自身がたどり着けなかった『チャンピオン』。


フリッツは、息子たちに、自らの価値観を強要し。

その枠のなかにおしこめ。


不幸であったのは、子どもたちが、父親を偉大な存在として崇め、その支配に、従順であったこと。

父親に反発し、その権力からの脱出をしていれば。


作品は、次男のケビンの視点で描かれて。

逆に言えば、ケビンしか、生き残れなかったから。


弟が評価され、タイトル戦に。

活躍する弟たち。

それに対する葛藤。


そして、

三男デビッドは、日本遠征中に、内臓疾患により急死。25歳。

(よく覚えています)

四男ケリーは、拳銃で自殺。33歳。

五男マイクは、服毒自殺。23歳。


『呪われた一家』と呼ばれて。


その『呪われた一家』の烙印に、苦悩するケビン。

それは、妻のパム(リリー・ジェームズ)との関係にも、暗い影を。


この『アイアンクロー』という作品により、フリッツ一家の悲劇を、あらためて知ることが出来ました。


また、リック・フレアー(アーロン・ディーン・アイゼンバーグ)や、

ブルーザ・ブロディ(キャジー・ルイス・セレギーノ)。

ザ・シーク(チャボ・ゲレロJR)。

などなどの、懐かしい名前、その姿。


で、そうした懐かしさがあり。

また、展開もおもしろかったのですが。


132分のなかで、次々に『死』が。その葬式が。


となると、兄弟たちの描き方、その内面への掘り下げが浅く、そのために、次男のケビンとの関係も。

いわば、『薄味』に。

と、感じました。


ケビンだけが生き残り。

妻パムとの間に、ふたりの男の子が生まれ。


なぜ、ケビンだけが生き残ることが出来たか。

見終えたあと、あれこれと考えました。


ちなみに、そのふたりの男の子も、現在、長男がロス・フォン・エリック、次男がマーシャル・フォン・エリックで、プロレスラーとなっています。


そして、映画では描かれなかった六男のクリス。

彼も、21歳で、拳銃自殺をして。


公式サイトの、監督・脚本のショーン・ダーキンの言葉を、引用します。


フォン・エリック家は、スポーツ界のケネディ家と呼ばれてきた。一家は想像を絶するほどの喪失を体験したが、それでも『アイアンクロー』は、悲しみや苦しみの物語ではない。むしろ、悲しみの欠如と、人が自分の苦しみから目を逸らした時に、何が起こり得るかを描いている。一家の物語はアメリカの歴史のごく小さな一部分に過ぎないが、長年アメリカの文化に害を及ぼしてきた極端に歪められた男らしさや、近年僕たちがやっと理解し始めた考え方を掘り起こしている。ファミリードラマであり、ゴシックホラーでもあり、スポーツ映画でもある本作は、アメリカの中心部で展開する真のギリシャ悲劇ともいえる。ケビンが家族の掟を破って呪いを打ち砕き、より賢く、強く、平穏な心を持って苦境を脱する、復活の物語なのだ。

栄光、喪失、そしてアメリカ特有の男らしさの釣り合いを模索する映画の伝統を受け継ぎ、僕は、『レイジング・ブル』と『ディア・ハンター』からひらめきを得た。『アイアンクロー』の中心には、家族、父子、兄弟がある。愛を発見し、ありのままの自分を受け入れること。男とはこうあるべき、といった狭い考え方との闘い。栄光への渇望と成功という幻想。世代間の衝突と、希望にみちた新しい将来を見出すために求められる視点。『アイアンクロー』は、これら全てをテーマとし、自己発見、友情、兄弟愛、アメリカ合衆国におけるプロレスの栄光の日々を描き出している。






映画館の掲示から。