4月3日(水)、 久しぶりに。ザ・スズナリ。


『コロナ禍』で、下北沢の劇場では、本多劇場の公演に絞っていたので。


で、ザ・スズナリ。

狭くて、急な階段をのぼり。

ロビーも、客席も、変わっていませんでした。

開演に先だっての注意で、緊急事態の場合は、前方2ヵ所、後方2ヵ所に、非常口があるとの説明。

しかし、どの壁を破っても、脱出が可能ではないか、と。


で、『プレオム劇』による『ギラギラの月 乙女こころが三億円!?』。


中島淳彦(なかしま あつひこ)の脚本。

19年前に、初演されています。

今回は、その初演の台本を使用とのこと。


中島淳彦作品は、多く見ています。

『笑い』と『涙』が調和されていて、そこに生きる登場人物たちも、身近な存在。

肩を凝らせることなく、笑いながら、しんみりしながら、作品を楽しむことが出来て。

演劇鑑賞協会の観劇会でも、ずいぶんと上演し。

中島さんにも、その時には、夜の宴席にも。

しかし、惜しくも、2019年12月、58歳の若さで亡くなって。


で、中島淳彦さんが座付き作者であった『ハートランド』が、2016年に『プレオム劇』となって、公演を重ね、今回は、第6回公演。


演出は、小林美江。


作品の舞台は、

「さかのぼること約50数年前」(チラシ)。

ただ、1968(昭和43)年に、絞ることが出来ますが。


「東京のとある場所で若き少女漫画家たちがプロを目指して瞳を燃やし、マンガ道を突き進んでおりました。」


彼女たちが意識するのは、伝説ともなっている、手塚治虫や、寺田ヒロオ、藤子不二雄、石森章太郎、赤塚不二夫たちが共同生活をしていた『トキワ荘』。


彼女たちにとっては、手塚治虫は、『神様』なのです。


いかにして、雑誌に掲載されるか、連載をまかされるか。


支え合う仲間であるとともに、最大の敵でもある存在。


漫画家としての道を歩むために、まさに、切磋琢磨し。

互いの情熱をぶつけ合い。


舞台は、まさに、そのぶつかり合い。

にぎやかに、展開し。


そこに、『三億円事件』がおこり。

東京の府中で、白昼、白バイ警官に扮装した人物が、大胆不敵にも、三億円を強奪し。

はじめは、証拠の品を多く残しているから、犯人逮捕までは間もないと思われていたのに。


その衝撃的ニュース。


舞台は、にぎやかに展開して。


と、その展開を楽しみながら。


ただ、しかし。


その同じような波長にさらされ続けていると。


たとえば、雑誌の連載をまかされるということは、その競争から蹴落とされた者がいることであり。

そもそも、『漫画家』としての道が、目の前に拓かれているかどうかの不安もあり。

そうした『陰影』も、しっかりと描かれていれば、と。

確かに、そうした場面もあるので。

そのことによって、登場人物たちが、立体化していく、と。


初日だったためか、俳優たちが、全力を出しているようで。


もちろん、そこに、頑張っているな、という共感もあるのですが。


それと、さらに思うことは。

使われる音楽にしても、会話のなかでやり取りされる話題にしても、同時代を生きていた者にとっては、とても懐かしく。

すぐに、作品世界と、同化。

『三億円事件』にしても、その時の衝撃は、登場人物たちのそれと同じで、共鳴出来。

学生運動にしても、

つまり、リアルな世界が展開しているのですが。

しかし、世代として、それらをリアルな世界のものとしてとらえられない場合。

この作品の受け取り方が異なるのではないか、と。

もちろん、作品として、成り立つのですが。