2月26日(月) 、MET ライブビューイングで、『ナブッコ』を見ました。


ジュゼッペ・ヴェルディ(1813~1901)の作曲。


旧約聖書を素材として、台本は、テミストークレ・ソレーラ。


1841 年には完成し、

1842年3月9日、ミラノのスカラ座での初演。


プログラムに、

「祖国の喪失と回復を描くオペラ」とあり、

「イタリアの人々の統一国家樹立の希望をかきたて」と。


初演、観衆は、熱狂の渦につつまれ。


バビロンの、エルサレム侵攻。

劣勢に置かれたヘブライの民。


タイトルロールの『ナブッコ』は、攻撃を加えるバビロニアの王。

独裁者として君臨し。


その彼のふたりの娘。

アビガイッレ。ナブッコが、奴隷の女に生ませた娘。

フェネーナ。ナブッコが、後継者として考える娘。


ふたりの娘は、エルサレム王の甥であるイズマエールに、思いを寄せ。


そのイズマエールは、フェネーナを愛し。


圧倒的な軍事力により、一気にエルサレムに攻めこんだバビロニア。

その混乱を背景に、

父ナブッコと、娘アビガイッレとの対立。

イズマエールを間にした、アビガイッレとフェネーナの対立。


権力対立と、愛情の対立。

それがない交ぜになって、雄大な物語を紡いでいきます。


なにしろ、『歴史劇』なので、舞台上に立つ人物も多く。


その迫力ある歌声が、ガンガン(好意的な意味)と迫り。


指揮者ダニエレ・カッルガーリへのインタビューで、楽曲の三分の二は、合唱のパートだと知らされ。

この『ナブッコ』は、何回も見ているのに、あらためて、その事を知り、納得。


合唱の中でも有名なのが、

『ゆけ、わが思いよ。黄金の翼に乗って』。


指揮者の言葉を続けると、指揮をしていて、この合唱になると、客席に緊張感がみなぎり、その凝縮した空気を、背後に感じる、と。

確かに、今回も。

客席の空気が、引き締まり。


イタリアでは、第2の国歌とも言われ。


初演の時には、この曲、アンコールの声が強く、再び歌われた、と。


昔、ローマを旅行した時、カラカラ浴場跡の野外でのオペラ公演があり。

(現在は、遺跡保存のためにありません)

ホテルのフロントに、演目はなにかと尋ねると、この『ゆけ、わが思いよ。』の冒頭を歌ってくれました。

そして、夏の夜空のもと、この『ナブッコ』を観劇。

すると、聴衆も、ともに歌いはじめ。

で、そのまま、アンコールで、もう一度。

聴衆は、立ち上がり、さらに大きな歌声となり。


感激した一夜でした。


ただ、観劇を終えて、いざ帰ろうとして、どの行き先のバスに乗ればいいかわからず、次々と走り出すバスに焦りながら、ホテルが駅の近くであったので、バスの運転手に、駅の名前を告げ、確認して、ようやく乗車。

しかし、小銭がなく。

すると、乗り合わせていた少女たちが、みんなの財布からくずしてくれて。


それにも、感激した一夜でした。


と、この『ナブッコ』は、その時の思い出と結びついて。


今回の、メトロポリタン歌劇場の、『ナブッコ』上演の背景には、ロシアによるウクライナ侵攻があります。


アビガイッレのリュドミラ・モナスセィルスカは、ウクライナ出身。

幕間のインタビューでは、その事にふれ、彼女に、コメントを求めて。


フェネーナのマリア・バラコーワは、ロシア出身。しかし、彼女には、ウクライナ問題を質問せず。


メトロポリタン歌劇場は、プーチン支持の指揮者や、歌手を、排除しています。


いったんは、父のナブッコから、権力を奪い取ったアビガイッレ。

しかし、神の怒りに撃たれ、気を失い。再び生き返ったナブッコは。


独裁者の覚醒。


エルサレムは救われ。


で、この雄大な物語は、幕をおろします。


タイトルロールのナブッコを、ジョージ・ギャグニッザ。

アビガイッレを、リュドミラ・モナスセィルスカ。

フェネーナを、マリア・バラコーワ。

イズマエールを、ソクジョン・ベク。

その他。


『ナブッコ』、ヴェルディのよく知られたオペラ。

みどころ、ききどころも多く。

で、映画館の観客も、多くて。


ジュゼッペ・ヴェルディ。


ベルナルド・ベルトルッチ監督の『1900』という作品。

1976年の製作。

日本公開は、1982年。

316分の、長い長い作品。

ロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデュー、ドナルド・サザーランド、バート・ランカスターなどの出演。

映画の冒頭の場面が、

『ヴェルディが死んだ!』と、道を走りながら、叫ぶ場面でした。