2月5日(月)、METライブビューイングの第3作として、『アマゾンのフロレンシア』を見ました。


ダニエル・カターン(1949~2011)の作曲。


台本は、マルセラ・フェンテス=ベレン。


1996年10月25日、ヒューストンの、ウォータム・シアター・センターでの初演。


今回が、 MET初演。

MET での上演は、昨年2023年12月9日。


演出は、メアリー・ジマーマン。


指揮は、ヤニック・ネゼ=セガン。


2幕の舞台。

第1幕。

アマゾンの熱帯雨林を進み、その奥地マナウスに至る航路を進みエルドラド号。

そのエルドラド号に乗船する人びと。

目的は、伝説的な歌姫フロレンシア・グルマルディの歌を聴くこと。

その見事な歌声は、人びとを魅了するが、誰も、その姿を知らない、という『伝説的な歌姫』。


舞台を進行させるのは、リオロボ(マッティア・オリヴィエリ)。

プログラムには、河の精霊と記されています。


次々と乗船する人びと。


フロレンシアの研究を長年続けている記者ロサルバ(ガブリエラ・レイエス)。

その研究は、分厚いノートに書きためられていて。


倦怠期を迎えているパウラ(ナンシー・ビオラ・エレーラ)と、アルバロ(マイケル・キオルディ)のカップル。


そして、フロレンシア(アイリーン・ペレス)本人も。

若い頃に、クリストバルとの恋。しかし、「恋人クリストバルへの愛で驚異的な声の能力は花開いたが、その声で得た名声に自分を見失ってしまったことを後悔し、蝶狩りに出たまま行方不明の彼を探すために」(『パンフレット』の『STORY』から)、マナウスに。


物語は、

フロレンシアとクリストバルを主軸に。

パウラとアルバロ。

そして、ロサルバと、乗船していた船長の甥で、船員をしているアルカディオ(マリオ・チャン)。

その3組の愛の模様を展開していきます。


やがて、船は、嵐に襲われて。


そこまでが、第1幕。


第2幕は、嵐によって、生死の境をさまよった人びとは、無事に、再会し。

パウラとアルバロは、愛を再確認し。

ロサルバは、アルカディオへの愛に気づいて、ふたりの想いは成就し。


で、長い航海の終わり。

エルドラド号は、マナウスに到着。

しかし、そこは、コレラが蔓延していて、上陸することは出来ない。


蝶を追い求めて、アマゾンの熱帯雨林に入り込んで、行方不明となったクリストバル。

彼との再会が叶えられないと知ったフロレンシアは、その想いを歌う。


フロレンシアの、クリストバルを想ってのアリアは、冒頭と、この終盤に。

どちらも、その想いの深さを、長く長く歌い上げるのですが、心の奥底にまでひびいて来ます。

アイリーン・ペレスの

「少し陰を帯びた光沢がある声」。その声で、「深いニュアンスを加えて歌うソプラノ。ピアニッシモも美しい。」

と、『パンフレット』にも紹介されていますが。


で、その想いがたかまり、フロレンシアの背に、蝶の羽が。

そして、蝶は、高く、そして、自由に飛翔して。


舞台上は、上手と下手の壁に、ジャングルが描かれていて。

その上手と下手の壁が、舞台上にせりだして来たり、あるいは、退いたりしながら、アマゾンの河の流れ、それが広がったり、狭まったり。


鳥が歌い、蝶が舞い。

河には、ピラニアをはじめとする魚たちも。

そして、ワニも。

猿も、活躍し。


背中から、蝶の羽が。

しかし、それが、不思議でもなんでもなく。


幕間のインタビューのなかで、ガブリエル・ガルシア=マルケス(1927~2014)について触れていました。

1982年に、ノーベル文学賞を受賞した時の、その受賞理由は、

「現実的なものと幻想的なものとを融合させて、ひとつの大陸の生と葛藤の実相を反映する豊かな想像力の世界を構築した。」


『マジックリアリズム』と呼ばれたりも。


豊穣の時を過ごすことが出来ました。